2016 Fiscal Year Research-status Report
アジ科魚類ヒラアジ類の稚幼魚を含む分類・同定ならびに系統に関する研究
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16K07840
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木村 清志 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (00115700)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アジ科 / ギンガメアジ属 / ヨロイアジ属 / カイワリ属 / 分類 / 幼魚 / DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
1.本年度に行った研究の内容. (1)標本の採集-本年度日本国内では沖縄県,鹿児島県,三重県で約40個体のギンガメアジ属を中心としたヒラアジ類を採集し,このうち約半数は稚幼魚であった.また,国外ではベトナム北部でヨロイアジ属やクボアジ属,ヒシカイワリ属と中心としたヒラアジ類を約60個体採集した.当初国内での採集調査は宮崎県を予定していたが鹿児島県に変更した.海外調査はベトナムとマレーシアの2ヶ国を予定していたが,ベトナムのみの調査となった.しかし,国内,国外ともに,予想していたよりも多くのヒラアジ類を採集することができた. (2)採集した標本の解析-今年度採集したヒラアジ類標本や当実験所に保管していたヒラアジ類標本について稚幼魚および成魚のDNA解析を行った.この結果,ギンガメアジ属やヨロイアジ属などの幼魚の同定ができ,現在これらの稚幼魚の形態的特徴の解析を集中的に進めている.さらに,カイワリ属の系統や分類についてはかなり研究が進んだ. (3)タイプ標本調査-正確な同定に不可欠であるタイプ標本の形態観察をアメリカ合衆国国立自然史博物館およびアメリカ自然史博物館で行った.この調査で,27名義種29タイプ標本の詳細な形態測定を行うことができた. 2.本年度に行った研究の意義と重要性 本年度に行った研究内容はほぼ研究計画に記したものと大きな相違はない.今年度の得られた研究結果で大きな意義を有するものは,ヒラアジ類の幼魚の同定をDNAデーターから行い,さらにこの同定に基づく形態データーの抽出から,ヒラアジ類稚幼魚の正確な検索表が作成可能となったことである.この結果は魚類分類学だけでなく,水産資源生物学の分野でも重要性が高いものと考えられる.一方,カイワリ属の系統および各種の分類学的再検討が完成に近づき,この内容は従来考えられてきた系統関係とは大きく異なるものであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記したように,本年度の研究内容についてはほぼ当初の計画通りに行うことができた.カイワリ属の系統,分類学的再検討は完成に近い状態に達し,また当初本年度には計画していなかったアメリカ合衆国でのタイプ標本調査を行い,多くのタイプ標本の形態学的データーを得ることができた.一方,ギンガメアジ属やヨロイアジ属稚幼魚のDNA解析と形態観察を集中して行ったため,成魚のDNA解析に遅れが生じ,当初予定していたヒラアジ類全体の分子系統解析については未だ十分な結論が得られていない.このように,本研究で行ういくつかの項目のうち,遅れているものもあるが,逆に予定よりも進んでいるものもあり,相対的に概ね予定どおりの進捗状況ではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究も,基本的に当初の研究計画に沿って進めて行く.本年度の研究で遅れがあったヒラアジ類全体の分子系統解析については今年度集中的に推進する.また,カイワリ属の系統と分類学的再検討には平成29年度の国際学会で発表する予定である.さらに,ギンガメアジ属魚類稚幼魚の検索表を平成29年度には完成させたいと考えている.本年度に調査できなかったマレーシアでの調査を平成29年度に行い,さらに,本年度台風の影響で十分な調査が行えなかった西表島調査は平成30年度に再度行う予定とした.
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は,まず本年度実施できたDNAの解析数が当初予定よりもかなり少なくなったことによって,解析費,人件費,消耗品費の執行額が予算よりも大幅に減少したこと,軟X線写真フィルムが受注生産となって,本年度の購入が不可能であったこと,宮崎への国内出張を取りやめ別経費で行った鹿児島で採集したこと,マレーシアでの海外調査ができなかったことなどによる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は前年度できなかった大量の成魚を主とした標本の遺伝子解析を行い,さらに,マレーシアでの調査を行う.さらに,当初予定の国内出張ならびに国際学会での発表も行う.軟X線写真フィルムは納入までに時間がかかることから,年度初めに購入する.
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Research Products
(1 results)