2017 Fiscal Year Research-status Report
光受容器官としての血嚢体の生理機能解明によるニホンウナギの新規成熟誘起技術の開発
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16K07846
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
香川 浩彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (60169381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 教授 (50360508)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / 血嚢体 / 光受容 / 性成熟 / 成熟誘導 / 種苗生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで全く考慮されなかったニホンウナギの血嚢体の光受容器官としての役割や成熟制御機能を分子生物学的手法を用いて明らかにするとともに、得られた基礎的知見をもとにニホンウナギの安定した受精卵確保のための新たな環境制御による成熟促進法の開発を指す。血嚢体における発現遺伝子の網羅的探索を行い、ニホンウナギ脳内に17種類の光受容体が存在することを明らかにした。このうち、青型オプシン( sws2 )、緑型オプシン(RH2 )、および桿体オプシン( fwo )遺伝子のほか、非視覚系光受容体オプシン(opn4x、opn3、TMT-opn、VA-opsin)などが血嚢体で発現していることが明らかとなった。このことから、血嚢体は光受容器官として機能している可能性が示唆された。人為的なホルモン処理により成熟を誘導した雌ウナギでは、sws2の発現量が未熟個体と比較して有意に上昇していた。また、屋外池で自然環境下で飼育しているニホンウナギ雄の血嚢体において、sws2の発現量がニホンウナギの初期成熟開始時期とされている10月に上昇し、冬季も高い値を維持した。これらの結果から、ニホンウナギの血嚢体は光受容器官として性成熟にとって重要な生理学的役割を果している可能性が強く示唆された。また、光受容後の情報伝達を担う因子(光周性因子)として、甲状腺刺激ホルモン(tshβ)、甲状腺刺激ホルモン受容体(tshr)及び甲状腺ホルモン転換酵素(dio2)もニホンウナギ血嚢体で発現していることが明らかとなった。今後は、これらの光周性因子と成熟との関係を明らかにするととともに、血嚢体が性成熟に果たす役割を明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニホンウナギで初めて光受容体が血嚢体に存在することを明らかにし、そのうち青型オプシン遺伝子が性成熟に伴って上昇すること、自然の環境下で飼育している雄ニホンウナギで成熟が開始すると考えられる夏から秋にかけて青型オプシンが上昇することなどを初めて明らかにした。このことから、ニホンウナギの血嚢体は光受容器官であるとともに性成熟にも関与していることが強く示唆された。また、光受容後の情報伝達に関わる因子として甲状腺刺激ホルモン(tshβ)、甲状腺刺激ホルモン受容体(tshr)及び甲状腺ホルモン転換酵素(dio2)などが血嚢体で発現していることも初めて明らかにした。予定していた実験がおおむね順調に行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかにした光周性因子、甲状腺刺激ホルモン(tshβ)、甲状腺刺激ホルモン受容体(tshr)及び甲状腺ホルモン転換酵素(dio2)などと性成熟の関係を明らかにする必要がある。また、血嚢体が実際に性成熟と関連しているかを直接明らかにするための、血嚢体除去が性成熟に及ぼす影響について実験を行う予定である。さらに、今回の研究の結果、副次的に発見された脳下垂体における非視覚系光受容体オプシン、opn5の生理機能についても検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた薬品類の購入価格が安価であったために余剰が生じた。本年度(30年度)の予算と合わせて、消耗品の購入に充てることとし、適切に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)