2017 Fiscal Year Research-status Report
Affinities between Japanese style fisheries management and Individual Quota (IQ) ; What is Japanese style IQ?
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16K07848
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
東村 玲子 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (30363881)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 学 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 准教授 (00425018)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | TAC / 総漁獲可能量 / IQ / 個別割当 / 自主的管理 / 試験的IQ / ズワイガニ / 北部太平洋まき網漁業 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本海A海域大臣管理(石川県から島根県)のズワイガニ漁業を日本におけるTAC管理の成功事例の1つとして取り上げた。当該漁業のTACは水産庁により決定されるものの,実際の運用は業界団体(全国底曳網漁業連合会)が担っている。これが成功している要因は,漁業管理の取引コストが低いことである。多くの漁業者は現状ではIQが成功するとは考えていない。しかしながら,2020年に資源量が急減することが既に予測されており,その際にはIQの導入もあり得る。 また北部太平洋海区の大中型まき網漁業において導入された試験的IQの初年度(2014年10月1日~2015年6月30日)を主な対象として考察した。従来の自主管理からの経緯を踏まえると,漁業経営上の効果も期待される中で,実質的に資源管理強化としてのみ機能していること,自主管理のルールがその決定者である漁業経営者らのみならず,北部太平洋海区に参入する併有船にも遵守されていることを明らかにした。このことから,自主的管理の把握の重要性が浮き上がった。IQを含む個別割当方式のメリット等の既存研究では,自主的管理や公的管理で形成されている総合的な管理実態の下での導入は想定外にある。試験的IQ船が時化休漁から除外されることが確認されていたにも関わらず結局遵守された。 2018年4月現在,水産庁は重要政策課題の1つに「IQを含む数量管理の強化」をあげている。現在,試験的IQが導入されている北部太平洋まき網漁業では,法的IQの導入に否定的な考えが強いとの仮定である。一方で,自主的管理(投入量規制,技術的規制)の歴史が長く,またそれにより漁業管理が現状では成功している日本海A海域大臣管理のズワイガニ漁業はIQの導入に踏み切る可能性もある。 この様な政策転換の時期において,両漁業を実態に即して分析することは,今後の水産政策の方向性を見極める上でも非常に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が2017年度限りのミャンマー連邦共和国およびインドネシア共和国での現地調査予算を獲得したため,次年度繰越が可能な科研費によるカナダでの現地調査を2018年度に行うこととした。そのため,2017年度に行う予定であったカナダでの現地調査の結果を踏まえた考察には至っていない。 新たに設けた研究力者は,非大学機関から大学機関への転職を行った初年度ということもあり,本研究推進のための環境整備に時間が必要であった。これに加え,在籍校において原則在職2年以上の専任教員のみが対象となる長期の海外出張について、諸事情により就任初年度にも関わらず拝命したことをはじめ,長期間・長時間の拘束を伴う諸業務を担当した。 また,聞取り調査等による定性的な調査は進んだものの,これを裏付けるデータの入手について調査先の調整に数ヶ月要するなど,研究蓄積の精緻化に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は,2018年9月6日から9月27日の旅程でカナダでのズワイガニの漁業管理に関する現地調査を行う予定である。航空券とホテルの予約は完了している。現地での聞き取り調査についても,漁業管理を管轄するカナダ連邦政府漁業海洋省のNewfoundland and Labrador州事務所の以前からの協力者と同州St. Anthonyの漁業者にもアポ取りを済ませてある。連邦政府の協力者から同州都St. John'sにおける聞き取り調査および資料収集の協力者を紹介してもらうことの内諾を得ている。St. Anthonyにおいても協力漁業者を通じての現地調査が可能である(既に6回の実績がある)。また日本の大手水産会社からSt. John'sに本社のあるズワイガニ加工・輸出会社の紹介を受けており,幅広い観点からカナダのズワイガニの漁業管理についての知見を得ることが期待出来る。 日本においては,2018年7月から8月10日の間(底曳網漁業の休漁期間)に日本海A海域のズワイガニ漁業者に聞き取り調査を行う予定である。 これらを基に日本の公的管理と自主的管理の相互関係の特徴を明らかにすると共に,公的な数量管理(産出量規制)と自主的管理(現在の日本は投入量規制と技術的規制がメイン)が成功する要因について検討する。 研究協力者は,北部太平洋まき網漁業を主な対象として以下の個別課題に取組む。まず,同漁業の自主的管理について,わが国ではこれまで沿岸漁業を中心に見られてきた資源管理型漁業との類似性を検証することである。次に,同漁業で2014年度から実施されている試験的IQについて2年度目以降の制度変化を考慮した上での影響を明らかにする。 最後に資源量の変動を踏まえてTAC制度を始めとする公的管理と,自主的管理の総合的把握に努め,日本型個別割当への貢献に繋げる。
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Causes of Carryover |
研究代表者が2017年度限りのミャンマー連邦共和国およびインドネシア共和国での現地調査予算を獲得したため,次年度繰越が可能な科研費によるカナダでの現地調査を2018年度に行うこととした。 既に2018年9月6日から9月27日の日程でカナダ渡航の航空券とホテルの予約は完了している。現地での聞き取り調査についても,漁業管理を管轄するカナダ連邦政府のNewfoundland and Labrador州事務所の以前からの協力者と同州St. Anthonyの漁業者にもアポ取りを済ませてある。連邦政府の協力者から同州都St. John'sにおける聞き取り調査および資料収集の協力者を紹介してもらうことの内諾を得ている。St. Anthonyにおいても協力漁業者を通じての現地調査も可能である(既に6回の実績がある)。 なお,予算の制約からニュージーランドでの現地調査は行わない。 新たに設けた研究力者は,非大学機関から大学機関への転職を行った初年度ということもあり,本研究推進のための環境整備に時間が必要であった。これに加え,在籍校において原則在職2年以上の専任教員のみが対象となる長期の海外出張について、諸事情により就任初年度にも関わらず拝命したことをはじめ,長期間・長時間の拘束を伴う諸業務を担当した。
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