2017 Fiscal Year Research-status Report
天然河川におけるニホンウナギの生理生態学的解析に基づいた資源動態モデルの構築
Project/Area Number |
16K07851
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
吉永 龍起 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (30406912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / シラスウナギ / 塩類細胞 / 絶滅危惧種 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニホンウナギは,フィリピン海のグアム島周辺海域で生まれ,12月から翌年の3月ごろにかけて河川に接岸する.一方,来遊量は激減を続けて絶滅危惧種(IB類)に掲載されており,有効な保全策の立案が急務となっている.しかし,来遊量に関しては信頼度の乏しい漁獲統計しか存在せず,また海洋から河川に生活の場を移す際の生態的および生理的な変化は十分に理解されていない.そこで本研究は,シラスウナギの接岸量モニタリングを実施するとともに,河川生活初期における生理的な変化を明らかにすることを目的とした. 成果-1:新月の前後に神奈川県相模川河口においてシラスウナギの接岸量を調べた.2016年11月から2017年6月にかけて接岸が確認され,12月から3月にかけてがピークであった(n = 27-99).一方,2017年は12月まで接岸がなく,2018年1月と2月もわずかに認められたのみであった(それぞれn = 9, 4).しかし,3月には182個体,4月にも90個体の接岸が認められた.本研究により,接岸時期が例年よりも遅れていることが確認された. 成果-2:海水から淡水へと成長の場を移す際には,塩分の異なる環境に適応する必要がある.この機構を定量的に評価するために,鰓に存在して塩イオンの取り込みと排出を担う塩類細胞の解析を実施した.塩類細胞で機能する3種類のタンパク質(NKA,NKCC,CFTR)について,特異抗体を用いた2重染色法を確立した.また,共焦点レーザー顕微鏡を利用して,塩類細胞の体積を測定した.その結果,シラスウナギ期(全長,53.2 - 58.6 mm)では2000 - 10000 um^3)であるのに対し,黄ウナギ期では2000 um^3以下となり,これを指標として塩分適応を定量的に評価できることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年の5月ごろに河川においてクロコ期の標本の採集を計画していたが,ほとんど採集できなかった.過去に十分な実績がある地点であり,理由は明らかではない.そこで,2018年度も採集を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
シラスウナギの来遊量調査を継続し,接岸の実態を明らかにする予定である.調査地点では過去に初夏の接岸群が確認されており,同様の現象が起こるものと予測される.4月以降の接岸群は漁獲されることがないため,天然資源の維持に重要な役割を担っているものと考えられる.本研究では接岸の時期と量を科学的な手法で明らかにして,有効な資源保護策の立案に繋げる. クロコ期の標本が得られなかったことは想定外であったが,2018年度も採集を試みる.接岸の時期が遅れているため,むしろ好都合となったと考えている.また,生理的な解析手法は確立されたため,標本が得られれば計画通りの成果が得られると考えている.さらに,天然個体が得られなかった場合に備えて,飼育実験も実施している.
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Causes of Carryover |
天然個体の採集が一部できなかったため,計画を若干変更した.2018年度に採集を予定しているため,その分の経費が翌年度分となった.
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Research Products
(4 results)