2016 Fiscal Year Research-status Report
ホンダワラ属の海藻におけるD-アスパラギン酸の役割および起源
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16K07852
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
横山 雄彦 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (60296431)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | D-アスパラギン酸 / 海藻 / ヒジキ |
Outline of Annual Research Achievements |
約40種類の海藻において真核生物に稀な遊離D-アスパラギン酸含量を調べた結果,緑藻(5種)および紅藻(15種)からはD-アスパラギン酸が全く検出されなかった。しかし,調べた褐藻18種のうち5種からD-アスパラギン酸が検出された。この5種は全てホンダワラ属に属する海藻であったが,ホンダワラ属の海藻であってもD-アスパラギン酸が検出されない種も3種あった。ホンダワラ属に属する海藻の生育環境や生育時期は似通っているため,D-アスパラギン酸との相関は低いと考えた。そこで,ホンダワラ属の海藻を進化の系統樹に従い,属と種の間の分類体系である「節」に従って分類したところ,ホンダワラ属テレティア節に属する種からはD-アスパラギン酸が検出されなかった。したがって,「ホンダワラ属に属する海藻には,基本的に真核生物に稀なD-アスパラギン酸が含まれているが,例外的にテレティア節に属する海藻にはD-Aspが存在しない」ということが示唆された。 D-アスパラギン酸の生理的役割については,アカガイで低酸素条件下における補助エネルギーとしての役割が提案されている。ヒジキを暗条件下で低酸素人工海水に浸したところ,実験開始12時間後までL-アスパラギン酸とともにD-アスパラギン酸が減少した。24時間後に暗条件下で低酸素条件からエアレーションを入れて通常の条件に戻したところ,エアレーションを開始してから12時間後にはコントロールと同様のレベルまでD-アスパラギン酸が増加した。以上の結果からヒジキにおいてもD-アスパラギン酸が低酸素と関係があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホンダワラ属に属する海藻には,基本的に真核生物に稀なD-アスパラギン酸が含まれているが,例外的にテレティア節に属する海藻にはD-Aspが存在しないということが証明できた。すなわち,ホンダワラ属に属する海藻における遊離D-アスパラギン酸の分布は進化と関係があるという結果を示せたため。また,生理機能の一つとしてヒジキでD-アスパラギン酸が低酸素と関係があることが推察できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
ホンダワラ属に属する海藻における遊離D-アスパラギン酸の分布は進化と関係があることが示唆された。これはすなわち,D-アスパラギン酸を合成する酵素の進化とも言える。今後は海藻では未解明であるD-アスパラギン酸合成酵素の探索を目的とする。
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Research Products
(2 results)