2020 Fiscal Year Research-status Report
視覚的障害物の競争緩和効果を利用したサケ科複数種の放流魚と野生魚の共存策の提言
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16K07857
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
長谷川 功 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(札幌), 主任研究員 (00603325)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | さけます / 捕食ー被食関係 / 放流魚 / 野生魚 |
Outline of Annual Research Achievements |
捕食は野生魚/放流魚問わず資源減耗の主要因とされる。最適採餌理論を単純にふまえると、捕食者は餌として価値の高い大型個体を選択する。一方、捕食者回避の観点からすれば、遊泳力に劣る小型個体の方が捕食されやすいとも考えられる。そこで、サケとサクラマスの稚魚とそれらの捕食者である大型魚(主にイワナとブラウントラウト)を対象に、北海道内の3地点(河川上・中流と沿岸域)で捕食された稚魚の体サイズ組成を野生魚と放流魚ごとに検討することを試みた。 2018年から2020年にかけて、種苗放流にあわせて捕食者を釣り、水中銃、電気漁具を用いて捕獲し、胃内容物を採取した。胃内容物中に未消化の稚魚が含まれた場合は、それらの体サイズ(尾叉長)を測定し、耳石温度標識の確認によって野生魚(標識なし)と放流魚(標識あり)を区別した。そして、稚魚全体と捕食された稚魚の体サイズを比較した。 いずれの地点においても、捕食されていた稚魚はほとんどが放流魚であった(3地点計654個体中642個体)。したがって、放流魚についてのみ体サイズ組成の検討を行った。平均体サイズは、放流魚全体に比べて捕食された放流魚は小さかった。本研究で捕食者として扱った魚種は、群れに突進して小型魚を捕食する。そのような捕食行動の場合、捕食者は餌生物を体サイズに応じて選択できるとは考えにくい。むしろ体サイズの違いによって生じる捕食者回避能力の違いが反映されたため、小型個体の方が多く捕食されたのであろう。このように捕食の影響を検討する際には、捕食者側からみた採餌理論と被食者側からみた捕食者回避の両方の視点が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記述した内容は国際的な学術誌であるCanadian Journal of Fisheries and Aquatic Science誌に受理され、すでにonline first版が公開された。2020年度はコロナウイルスの影響で野外調査は中止・延期を強いられたが、主要成果の論文が公開されたことから「おおむね順調な進展」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
捕食された放流魚の体サイズについて、放流地点から離れ、放流魚がある程度河川環境に馴致した場所でどのようになるか追試を行う。また、本採択課題を通じて得られた野生魚と放流魚間の種間関係(競争、捕食ー被食関係など)について、英文で総説の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により予定していた野外調査の一部や海外出張(国際学会への参加)を中止したために残額が生じた。今年度は、この残額分を使用して、野外調査の追試を行い、現在執筆中の原稿(英語書籍の分担執筆)の英文校閲を行う。
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Research Products
(5 results)