2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K07862
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
若林 敏江 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 准教授 (80392918)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ケンサキイカ / 稚仔 / 分布 / 遺伝解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本周辺に分布し日本海南西部から九州北西部でいか釣り漁業等の対象となっているケンサキイカの稚仔の分布から、資源構造の解明を行うことを目的としている。ケンサキイカは稚仔の形態も不明であることから、本研究ではまず稚仔の収集から始めた。 平成28年度は、当初の予定通り本校練習船による調査航海で、特に春季成熟群が来遊する5月および夏季成熟群が来遊する9月に、山陰沖から対馬海峡、および東シナ海においてプランクトンネットによる頭足類稚仔の採集を行った。その結果123個体の頭足類稚仔が採集されたが、形態による種同定の結果、ケンサキイカ属の稚仔は入っていなかった。そこで、平成29年度に予定していた「過去に採集された標本の収集」を前倒しで行い、ケンサキイカの産卵場の1つと言われている東シナ海で調査を行っている西海区水産研究所に依頼し、2002年~2016年までの主に2~4月に行われた4航海分の頭足類稚仔標本を収集し、計2719個体を対象に種同定を行った。その結果2002年の標本にケンサキイカ属稚仔が認められたが、平成28年度の予定である「DNAによる採集された稚仔の種判別」は、ホルマリン固定標本だったため実施することができなかった。平成29年度は、ホルマリンを使用していない標本も収集し、遺伝解析を行う予定である。 平成28年度のもう1つの計画である「ケンサキイカの季節群間の遺伝的差異の検証」については、本校練習船でいか釣りにより異なる季節発生群が収集されたので、その標本を用いミトコンドリアDNA COI領域前半部塩基配列約650bpを決定し、季節発生群間で比較を行ったが、差異は認められなかった。そこで、より多型性の高い非コーディング領域での比較を行うため、非コーディング領域を増幅させるプライマーの設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた3つの計画「ケンサキイカの季節群間の遺伝的差異の検証」、「新たな稚仔標本の収集」、「DNAによる採集された稚仔の種判別」のうち、2つについて実施し結果が得られた。実施できなかった「DNAによる採集された稚仔の種判別」は対象とするケンサキイカ属稚仔が採集されなかったためであり、来年度「DNAによる採集された稚仔の種判別」を確実に行うために、平成29年度に予定していた「過去に採集された標本の収集」を行い、その標本の中からケンサキイカ属稚仔を収集することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策は、当初の計画通り行う予定である。まずケンサキイカの季節群間に遺伝的差異の有無について、ミトコンドリアDNA塩基配列データをもとに検証を行ったところ差異がなかったため、その塩基配列を基準標本(成体)のデータとして稚仔の種判別用に用いる。次に本校練習船により採集されたイカ稚仔標本をDNA分析することにより、ケンサキイカの稚仔を探し、ケンサキイカと同定された標本を用い、詳細な形態を記載し、分類キーを探す。過去に様々な稚仔魚調査で採集された標本の中から、この分類キーを用いてケンサキイカの稚仔を探し、これらのケンサキイカの出現状況をもとに、稚仔の分布図を作成する。これをもとに季節、海洋環境を考慮し、稚仔の出現から資源構造を推定する。 平成28年度の計画もおおむね順調であったが、本研究の対象となるケンサキイカ稚仔と思われる標本が採集されていない。ケンサキイカ稚仔をより多く収集するために、「過去に採集された標本の収集」を、遺伝解析が可能であるエタノール標本固定したものを中心に収集すること、また引き続き行う「新たな稚仔標本の収集」については、現在はプランクトンネットが昼間の曳網でネットを海底直上10mまで降ろすことによって対応しているが、平成29年度は、稚仔が表層に浮いてくる夜間にも曳網することで対応する。
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Causes of Carryover |
平成28年度はケンサキイカ稚仔が採集されず論文を投稿する段階にいたらなかったため、当初予定してた研究成果発表費を使用することがなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には成果を論文として投稿し、その際に必要な経費として使用する。
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Research Products
(1 results)