2017 Fiscal Year Research-status Report
ホタテガイ外套膜組織に含まれる毒物質の同定と作用機構
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16K07865
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
長谷川 靖 室蘭工業大学, 工学研究科, 教授 (80261387)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 毒物質 / ホタテガイ |
Outline of Annual Research Achievements |
・ホタテガイに含まれる毒物質が麻痺性、下痢性貝毒とは異なるものであることを確立するため。それぞれの貝毒が抽出されるメタノールおよび塩酸を用いて外套膜から抽出を行い、毒性を評価した。いずれの抽出液にも毒性は認められず、水抽出した画分においてのみ毒性が確認されたことから未知毒物質であることが明らかになった。 ・燻製などとしても食されている外套膜組織の安全性評価のため、外套膜組織を熱処理したサンプルの毒性を評価したところ、熱処理しても毒性の低下は認められなかったことから組織内で熱に安定な状態で存在しているものと考えられた。 ・毒物質を同定するため、水抽出した画分を、イオン交換カラム、硫安分画、ゲルろ過カラムを用いて分画し毒物質の部分精製を行った。現在、部分分画した成分の毒性とその成分の解析を進めている。 ・毒物質の作用機構を調べるため、ヒト肝細胞HepG2を用いて検討を行った。外套膜抽出液は、培養肝細胞に対し、インスリン刺激に伴うAktのリン酸化の阻害、細胞内のグリコーゲン含量の低下、糖新生酵素の発現量増加をひきおこした。また、in vivoにおいても外套膜組織を食べさせたマウスの肝臓においてグリコーゲン含量の低下と糖新生酵素の発現量増加が検出された。これらの結果から、外套膜組織の摂取が肝臓のインスリン抵抗性を誘発し血糖値の上昇を引き起こしていることが示唆された。現在、マウスが死亡する原因が外套膜中に含まれるインスリン抵抗性誘発物質に類似しているかどうか検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・毒物質の同定まであともう一歩のところまで来ている。本年度中に毒物質の同定と毒性の作用機構を明らかにできるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
・毒物質の同定における評価において細胞培養系、マウスを用いたin vivo評価系を並行して使用して研究を進めてきた。細胞培養系においても毒性を検出することができるものの必ずしもin vivo評価系と一致していないことが示唆されてきた。in vivo評価系では1か月から2か月という時間と労力を要することから研究の進展を妨げている。今後より早い、簡便なin vivo評価系の構築が必須であると考えている。
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Causes of Carryover |
細胞培養系での毒性評価とマウスを用いた毒性評価に差が認められたことから当初の計画通りの実験を29年度に実施できなかった。30年度においてマウスを用いた実験系にシフトし予算を使用していく。
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