2016 Fiscal Year Research-status Report
アルカリ化酵母とその酵素系による強酸性水圏中和の分子機構の解明
Project/Area Number |
16K07868
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
浦野 直人 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90262336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡井 公彦 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (00596562)
石田 真巳 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80223006)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酵母 / 強酸性水圏 / 中性水圏 / 中和能 / アルカリ化酵母 / 酵素 / 生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
強酸性水圏(pH1~4)から発見して単離したアルカリ化酵母の更なる生態解明を行うために、一般の中性水圏(pH6.4~7.8)からのアルカリ化酵母の単離を試みた。横浜市の淡水圏-池や用水路の表層水・底層水などを中心に単離した。 アルカリ化酵母の菌種同定を行ったところ、Aureobasidium pullulans, Auriculibuller sp., Bullera alba, Candida parapsilosis, Candida oleophila, Candida cyclindracea, Candida sp., Crpptococcus sp., Cryputococcus flavescens, Filobasidium magnum, Hannaella pagnoccae, Meyerozyma guilliermondii, Pseudozoyma antarctica, Pseudozyma tsukubaensis, Papiliotrema flavescens, Rhodotorula sp., Leucosporidium golubeviiなど13属21種もの酵母種が発見された。 強酸性水圏での先行研究と比べて、一般水圏では多様性が高いことがわかった。また、群馬県吾妻川や秋田県田沢湖などの強酸性水圏から単離した酵母と同一種の酵母も発見された。 これらの結果から、酵母のアルカリ化能は、特定の酵母種が持つ一般的な性質であり、中性環境では発現しないが、酸性環境に置かれると発現する性質である可能性が高いと考えられた。 アルカリ化酵母の中和活性を持つ酵素系の単離を目指して、培養酵母細胞を破壊して、遠心後の沈殿物と上清を回収した。これらからはカザミノ酸を分解して、アンモニウムイオンを生成する酵素活性を得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アルカリ化酵母の生態系を解明する研究は非常に順調に進展した。中性水圏にもアルカリ化酵母が、多種多様に生息していることがわかった。生態系の解明研究は予想以上に進展した。 一方、アルカリ化酵母が保持する酵素系:酸性水を中和する活性を持つ酵素は単離することができなかった。当初の予想では酵素系は単一の酵素(アンモニウムリアーゼ)である可能性が高いと考えたが、複合酵素系であり、酵母細胞の破壊により酵素系が失活する可能性も示唆された。 現在は対応策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
アルカリ化酵母の生態系解明研究では、中性淡水圏にて多種多様のアルカリ化酵母が発見され、強酸性水圏のそれとほぼ同等の中和活性を持つことがわかった。今後は中性海水圏におけるアルカリ化酵母を探索する。 アルカリ化酵母が持つ酵素系の分子解析研究では、酵母細胞破壊液の蛋白質電気泳動を行ったところ、酸性環境で培養した酵母と中性環境で培養した酵母で、電気泳動のバンドに差があることがわかった。現在、異なった蛋白質バンドの解析を行っている。 今後はアルカリ化酵母のpH培養条件により異なった発現をする蛋白質の差から、中和関連酵素系を追跡していく計画である。
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Causes of Carryover |
28年度では、計画にあった中和活性酵素(アンモニウムイオン生成酵素)を単離することができなかった。これは酵素が当初の推測と異なり、複合酵素系である可能性が高く、酵母細胞の破壊により、酵素系の一部が失活している可能性が高くなった。研究の進展が遅れたため、研究の一部を29年度に回すことにした。 そこで29年度は、酵素系の解析を酵素活性から追跡するの代替として、菌体抽出蛋白質の電気泳動差から、解析することに研究方針を変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、アルカリ化酵母を酸性下と中性下で培養する。酵母菌体を破壊して蛋白質を抽出する。抽出液を電気泳動(1次元または2次元)する。酸性条件と中性条件で、異なった特定蛋白質を分離する。特定蛋白質のアミノ酸配列を決定して、蛋白質種を分類同定する。 蛋白質種から、中和活性酵素(アンモニウムイオン生成酵素)系を推測する。酵素系の遺伝子をクローニングする。 主に、上記の研究に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)