2017 Fiscal Year Research-status Report
若狭湾産の低・未利用食用海藻に含まれる新規抗炎症性成分の探索・精製と性状解析
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16K07879
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
横山 芳博 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (90291814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 公富 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (70410967)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗炎症性 / 海藻 / 一酸化窒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に紅藻1種に注目し、大量採集および成分単離を試みた結果、2つの活性ピークを得た。1つのピークはフラグメント解析の結果、既知成分であった。平成29年度にもう一方の第2ピークについてフラグメント解析を行った。しかし残念ながら第2ピークも既知成分であった。 平成29年度は、スクリーニング実験において一定の抗炎症活性を示し、これまで抗炎症性に関する報告の無い褐藻類1種および緑藻類1種を対象に実験を行った。これらの海藻類が示した抗炎症活性を再確認し、更なる作用機序の解明および成分の分離・特定による有効活用を目標として、各試料の成分がNOおよびTNF-αの産生・放出にどのような効果を示すか、RAW264.7細胞を用いて検討した。 褐藻は、一定の濃度から障害性を示したが、障害性の無い濃度でNO産生抑制効果を示した。緑藻は、細胞に障害を与えず、NO産生抑制効果を示した。そして、それぞれのNO産生抑制率から算出したIC50値は、褐藻0.026mg/ml、緑藻0.13mg/mlであり、褐藻の抑制効果が高い結果となった。また各試料は、細胞培養上清中のTNF-α濃度を減少させる効果を示した。しかし、褐藻は、障害性を示す濃度から効果を示したため、TNF-αへの効果を明らかにすることができなかった。今後、褐藻由来成分の炎症反応の上流における効果を検討し、また、分離・精製条件を明らかにすることが、作用機序解明や有効利用のために必要であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに90種以上の若狭湾産藻類を採集し、それらの抗炎症性に関してスクリーニングを行った。サンプリングおよびスクリーニング実験に関しては予定通り進捗している。しかし、新奇な抗炎症成分発見を期待して紅藻類に直目して成分の精製・構造解明に関する実験を試みたが、残念ながらこれまでに分離・同定した成分は既知のものであった。 平成30年度は、比較的強い抗炎症活性を有するとともに、これまでに抗炎症性に関して報告されていない二つの藻類について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度までに新たに抗炎症性が認められた褐藻類1種および緑藻類1種に注目して、中圧カラムクロマトグラフィーおよびHPLC、ゲルろ過により成分の分離精製を進める。分離した成分について、LC/MSおよびLC/MS/MSを用いて構造を推定する。精製海藻抽出成分が新規化合物であると考えられるとき、および、既知化合物であるがその化合物に抗炎症があることが知られていない場合には、その抗炎症性の作用機序解明に取り組む。炎症状態のモデルとして、大腸菌LPSおよびマウスIFN-γにより刺激したマウスマクロファージ由来RAW264.7細胞を用いて以下の検討を行う。 1)NOに加えてPG産生に影響するか否かの検討、2)iNOSおよびCOX-2に対する作用の検討、3)炎症誘発性サイトカインのmRNA発現に対する作用、4)転写制御因子に対する影響の検討、5)MAPKs経路に及ぼす影響の検討。 以上の検討によって、LPSおよびIFN-γ刺激によって炎症状態となっているマウスマクロファージ系RAW264.7細胞において、海藻抽出成分がどのような作用機序で抗炎症性を発揮するのかを明らかにする。即ち、情報伝達系のカスケードに影響するのか、炎症メディエーター産生に関与する酵素群の転写制御因子に関与するのか、各種mRNAの発現量や安定性、または、酵素タンパク質の性状(存在量や安定性など)にどのような影響を及ぼすのかを検証する。
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Causes of Carryover |
(理由)新奇の抗炎症性成分を発見したとき、または、既知成分であるが抗炎症性を新規に認めたときに、培養細胞を用いた詳細な作用機序の解析を行う予定であった。これまでに分離に成功した成分は、残念ながら抗炎症性を有することが知られている既知成分であったことから、詳細な機能解析実験は実施していないため。
(使用計画)現在複数の候補成分の分離に取り組んでいる。平成30年度は、それら海藻成分と培養細胞を用いた機能解析実験に取り組む予定である。また、残念ながら新奇成分発見には至らなかった場合は、食用海藻の新たな健康機能性を確認する実験に取り組むことを考えている。
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Research Products
(2 results)