2017 Fiscal Year Research-status Report
クルマエビの生殖におけるD-グルタミン酸の生理機能の解明
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16K07883
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 尚子 静岡理工科大学, 理工学部, 講師 (30392533)
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Project Period (FY) |
2017-02-23 – 2020-03-31
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Keywords | D-グルタミン酸 / D-アミノ酸 / クルマエビ |
Outline of Annual Research Achievements |
水生無脊椎動物には、D-アラニンとD-アスパラギン酸が存在していることが知られているが、クルマエビでは多量のD-グルタミン酸が雄の生殖腺にのみ特異的に存在しており、グルタミン酸ラセマーゼにより生合成されていることが明らかとなった。さらに、D-グルタミン酸は精巣のセルトリ細胞と思われる体細胞に局在していることから、精子形成に関わる機能を有するものと考えられた。そこで本研究では、雄のクルマエビに性成熟刺激を与えた際のD-グルタミン酸含量およびグルタミン酸ラセマーゼ活性の変動を明らかにするとともに、D-グルタミン酸生合成に関わる転写産物の網羅的な発現解析を行うこととした。 本年度は、まずクルマエビの眼柄切除によるD-グルタミン酸生合成への影響について検討を行った。雌のクルマエビでは、眼柄神経節のX器官-サイナス腺から卵黄形成抑制ホルモンが分泌されており、卵巣発達を抑制的に調節していることから、眼柄を切除すると卵巣が発達するため、眼柄切除による人工採卵が行われている。雄においても、眼柄切除により造雄腺の肥大や精巣が発達することが報告されていることから、雄の眼柄切除を行い、生殖腺のD-グルタミン酸含量およびグルタミン酸ラセマーゼ活性を測定した。眼柄切除は片眼切除とし、継時的にサンプリングを行った。さらに、雌の人工採卵では、飼育海水温度をコントロールすることで卵巣の発達を促すことから、環境温度が雄の生殖腺発達に及ぼす影響についても検討を行った。現在、測定データの解析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
育児休暇を1年間とり、本年度復帰して研究を再開したが、1年ぶりに実験装置を動かしてみたところ、様々な装置の故障が重なり、その対応にかなりの時間を要してしまった。さらに、クルマエビの飼育実験後の試料を凍結保存していたが、大学の停電によって-80℃のディープフリーザーが故障し、試料が溶解してしまったため、再実験が必要となってしまったことから、進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、雌による生殖刺激における雄生殖腺のD-グルタミン酸含量に及ぼす影響を明らかにし、D-グルタミン酸生合成に最も影響を及ぼす性成熟刺激を与えたクルマエビのトランスクリプト解析を次世代シークエンサーにより行い、D-グルタミン酸生合成に関わる転写産物を網羅的に解析する。
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Causes of Carryover |
本年度実施する予定だった雌クルマエビによる性成熟刺激が雄の生殖腺に及ぼす影響を検討する実験が、研究の遅れにより実施できなかったため、本実験にかかる費用を翌年度に持ち越し、翌年度直ちに実施することとした。また、翌年度分として請求した助成金は、予定通り次世代シークエンサーを用いたトランスクリプト解析実験に使用する。
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