2017 Fiscal Year Research-status Report
集落域を超えた新たな農村コミュニティが旧村単位の農業法人の形成に果たす役割
Project/Area Number |
16K07893
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
荒井 聡 福島大学, 農学系教育研究組織設置準備室, 教授 (90212589)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 営農組織 / 農村コミュニティ / 旧村領域 / 農業法人 / 地域営農法人 |
Outline of Annual Research Achievements |
熊本県菊池郡大津町において実施した関連機関及び農業法人への聞き取り調査結果をもとに、広域的な営農組織の形成条件について分析を行い、2017年度食農資源経済学会にて研究発表を行った。発表テーマは「新たな農村コミュニティが旧村領域の農業法人の形成に果たす役割 -熊本県N法人の事例を中心に-」である。担い手確保、集落機能維持、機械の共同利用によるコスト低減が組織の目的である。地域農地の維持を図る目的から、JA、町が共同出資者となっている。JAによる提起から組織された。集落の代表者からなる組織が新たなコミュニティを形成している。作業計画は本社が、作業は集落が行い、集落域を超えた作付調整・作業調整が行われている。いわば集落営農の「2階部分」の統合体として機能している。これにより効率的作業・低コストが図られ、戦略作物助成金などの支援も受け十分な所得が確保されている。加えて若手雇用によるインキュベーター機能も有しており、完全小作地経営、園芸作による周年就業が図られている。コミュニティ再構築による新しい営農組織形態が形成されている。「これまでに集落に受け継がれてきた 自然・環境・文化・伝統を荒らすことなく次代へとつなぎ、町の農村・集落を守る」ことを使命とする地域営農法人 (地域コミュニティ型経営モデル)としての役割を果たしているといえよう。 東日本地域の典型例として福島県会津坂下町の事例を対象として広域的な地域内連携システムについて調査を実施した。これと並行し、東日本大震災の被災地での新たな農村コミュニティの形成状況についても調査した。また早くから集落の領域を超えて旧村単位で集落営農法人が形成された岐阜県海津市での追加調査(旧F村、F法人)を実施し、そこでの農村コミュニティの形成状況について調査した。さらに農協組織による広域的な営農システム形成支援の状況について、岐阜県を中心に調査を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度に計画していた東日本地域での広域的な地域内連携システムの典型事例調査を福島県の事例を対象として実施した。これと並行し、東日本大震災の被災地での新たな農村コミュニティの形成状況についても調査した。また旧村単位で集落営農法人が形成された岐阜県海津市での追加調査(旧F村、F法人)を実施し、そこでの農村コミュニティの形成状況について調査した。収集資料の集計と分析を行っている。 これらの知見もふまえて成果を学会で発表した。2017年度食農資源経済学会での研究発表「新たな農村コミュニティが旧村領域の農業法人の形成に果たす役割」の概要は、『食農資源経済論文集』第69巻第1号(2018年)に収録されている。ここにおいてコミュニティ再構築による新しい営農組織形態である地域営農法人の形成条件が解明されている。また藤田武弘氏らとの共著『現代の食料・農業・農村を考える』において「農地制度と土地利用」を執筆し、農業法人の形成状況を明確化した。 これらの研究成果は、関連学会等で収集した最新研究成果の情報をふまえて、福島大学食農講座、福島大学オープンキャンパス、福島県稲作経営者会議大会、福島県農協大会、福島県農協農業新聞大会などでの講演、アウトリーチ活動により社会に還元されている。 また、本基金の成果も収録した2017年3月に筑波書房から刊行した荒井聡『米政策改革による水田農業の変貌と集落営農 ―兼業農業地帯・岐阜からのアプローチ―』が、2017年度食農資源経済学会学術賞を受賞した。
|
Strategy for Future Research Activity |
東日本地域の典型例として福島県の事例を分析対象として、いわゆる枝番管理型の営農組織も含めて数地区選定し、広域的な地域内連携システムについて調査を実施する。これと並行し、東日本大震災の被災地での新たな農村コミュニティの形成状況についても調査する。あわせて農協組織による集落営農の組織化の取り組みが、集落の領域を超えた営農組織の形成に果たす役割についても考察する。 集落の領域を超えて旧村単位での集落営農再編・合併の事例について、岐阜県を中心として調査を実施する。そこでの農村コミュニティの再編状況について調査する。旧村型営農組織への各集落の関わり、米・大豆栽培のあり方、大豆加工のあり方などについてまとめる。集落営農の連携組織や会社組織などの重畳的な協同関係形成の仕組みを明らかにする。さらに西日本の広域的な営農システムの形成状況について追加調査を実施する。関係機関へのインタビュー、資料収集、組織役員へのインタビュー、対象集落の構成農家へのアンケート調査などを実施する。調査研究内容は、集落での寄り合いの開催状況、コミュニティ活動、農協事業への総合的な関わりに関する評価・意向などについてである。 あわせて2018年の集落営農実態調査結果、同活動調査結果、2015年農業センサス、同農業集落類型、2015年農業集落カードなどの新資料を分析する。これにより、集落営農組織の構造と機能、それを下支えする集落の協同機能などについて追加的な定量分析を実施する。対象地の農業センサス集落カードなどを分析し、農業集落の分類を行い、それに基づき、集落営農とそれを支える地域自治組織、農協の協同機能の関係性を定式化する。また、関連学会等で最新研究成果の情報を収集する。
|
Causes of Carryover |
図書の刊行遅れで発注できないものや、資料集計に人件費支出をしなかったため、予算残が生じた。次年度に持越し、速やかに予算執行する。
|