2016 Fiscal Year Research-status Report
オークション型環境直接支払による生態系保全と農業強化に関する研究
Project/Area Number |
16K07895
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 教授 (20397938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荘林 幹太郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (10460122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境直接支払 / 環境保全型農業 / 生態系サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オークション型環境直接支払の導入が、生態系保全と農業強化を両立させ得ることを実証することである。オークション型環境直接支払とは、農家(オークションの売り手)が環境直接支払に参加する際の希望交付単価を入札し、その内容に応じて自治体(オークションの買い手)が参加農家を選定する制度である。入札単価が低いほど選定されやすい「競り下げ方式」であることから、一般的な競り上げオークションと区別して逆オークションとも呼ばれる。理論上は、農家は環境直接支払に参加する機会費用を入札するため、あらゆる政策オプションの中でもっとも効率的な制度になる可能性がある。
研究初年度はまず、オークション型環境直接支払に関連したアンケート調査を稲作農家を対象として実施した。そのなかで、オークション型環境直接支払のインセンティブとしての各種ボーナス制度(規模ボーナス・新規ボーナス・隣接ボーナス)への反応を定量的に分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は経済実験に先立ち、オークション型環境直接支払の可能性について稲作農家を対象としたアンケート調査を実施した。このアンケートでは、オークション型環境直接支払においてインセンティブとなりうる、各種ボーナス制度(規模ボーナス・新規ボーナス・隣接ボーナス)に対する仮想的な採択の可否を尋ねた。得られた反応を統計的に処理することで、農家ごとのボーナス制度に対する機会費用を定量化した。
分析の結果、農家は規模ボーナス、隣接ボーナスに対しては有意に反応する傾向があり、その機会費用は農家により大きく異なることが示された。この結果から、これらのボーナス制度の導入においては、オークション型環境直接支払の導入が、費用対効果を大きく改善させる可能性が高いといえる。
一方、新規ボーナスについては統計的に有意な反応はみられなかった。新規農地を取得して環境保全型農業を実施するには初期コストが大きく、環境直接支払が想定するインセンティブでは十分でないものと考えられる。このことから、本プロジェクトにおける制度設計では、規模ボーナス・隣接ボーナスに注力していく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた分析結果をもとに、オークション型環境直接支払の制度設計にむけた、経済実験を実施していく。県内農家団体との調整も進んでおり、小規模な実験を複数回実施することで、制度に対する農家の反応についてデータ収集・統計分析をおこなう方針である。
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Causes of Carryover |
経済実験で発生する費用の多くが研究2年目以降に発生する見込みとなり、海外事例分析に関する海外出張も次年度に実施することになったため、初年度の支出実績は当初計画を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度に支出する予定だった項目も含め、今年度は計画通りに支出する計画である。
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