2018 Fiscal Year Research-status Report
動学的応用一般均衡モデルを用いた高温耐性品種米普及による地域経済への評価分析
Project/Area Number |
16K07907
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
阿久根 優子 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (90363952)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 気候変動 / 高温耐性品種米 / 地域経済 / 応用一般均衡分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、気候変動適応策としての高温耐性品種米による地域経済への影響を動学的応用一般均衡(DCGE)モデルを用いて評価することである。 平成30年度は、『農家経営統計調査』の個票データを用いて日本農業の生産性分布に関する分析を行い、併せてDCGEモデルで使用するパラメータを得た。特に、生産性を計測する際には、内生性の問題に考慮した推定方法を用いて生産関数を推定し、その結果から日本農業の全要素生産性(TFP)を計測した。加えて、営農類型別に分布の形状パラメータとバラエティ間の代替の弾力性を推定した。その結果、日本農業の生産者間の異質性を示すパレート分布の形状パラメータ(パレートのk)は2.31で、バラエティ間の代替の弾力性は1.71であることを明らかにした。また、営農類型ごとのパレートkを比較すると、施設野菜や果樹作といった野菜・果樹で相対的に高く、肥育牛や採卵養鶏、ブロイラー養鶏といった畜産関連の営農類型で相対的に低かった。本研究で対象としている水田作は、他の営農類型と比較して中程度であった。バラエティ間の代替の弾力性は、施設野菜作や施設花卉作などの施設園芸が比較的高い値であった一方で、肥育牛や水田作は相対的に低い値であった。さらに、TFPを4つの農業地域(都市的農業地域、平地農業地域、中間農業地域、山間農業地域)ごとに分けて、それらの生産性分布の形状が異なることを明らかにした。これらの結果を、第32回応用地域学会(ARSC)研究発表大会とWestern Regional Science Association (WRSA) 58th Annual Meetingの2つの学会 (うち1つは国際学会) で報告し、それぞれ分析結果やその解釈の妥当性や改善点を中心に討論者や参加者と議論を行い、有益なコメントを得た。現在、それらのコメントを踏まえて分析の改善に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DCGEモデル内で外生的に設定する必要がある稲作における生産者間のばらつきとともに財の差別化の程度について、個票データを用いて生産性分布の形状パラメータとバラエティ間の代替の弾力性を定量的に明らかにするとともに、次の地域間分析のために生産性分布の形状の比較などの予備分析を進めているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究予定は次のとおりである。まず、平成30年度に行った生産性分布の分析結果をまとめ、各地域を対象にその要因に関する分析を行う。そのうえで、それらの結果をDCGEモデルに導入する予定である。
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Causes of Carryover |
<理由>次年度使用額が生じた理由は、計画より成果が増え、学会報告や英文校閲など研究成果の発表にかかる経費が次年度に予想され、予算の効率的執行に努めたため、次年度使用額が生じた。 <計画>学会報告や英文校閲など研究成果を発表するために使用する予定である。
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