2017 Fiscal Year Research-status Report
食品のハラル制度の食品周辺分野への拡大の実態とその要因
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16K07908
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
並河 良一 帝京大学, 経済学部, 教授 (80313964)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハラル / 食品市場 / イスラム / 東南アジア / 中東 / 貿易 / 直接投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、研究の2年目として、海外ではマレーシアとシンガポールにおいて、国内では国立国会図書館等において、資料・情報を収集した。また、食品企業、化学品企業、ハラル認証団体等からも情報を収集した。 第1に、両国において、医薬品に焦点を当てて、一般マーケットにおいてハラル製品の情報を収集した。その結果、医薬品分野では、ハラル製品がそれほど普及していないことが明らかになった。 第2に、マレーシア国際ハラル見本市(MIHAS 2017)で、食品周辺分野(食品容器、サプリメント、機能性食品、化粧品、医薬品)のハラル対応製品やサービスの最新情報を、幅広く収集した。具体的には、ハラル認証マークの貼付された製品等を(報告者の自費で)購入して、表示内容等から、商品の種類、製造企業、生産地、含有成分、ハラル認証機関などの情報を取得した。その結果、食品周辺分野でも、世界各国で、多種多様なハラル製品・サービスが上市されている、あるいは上市の計画があることが明らかになった。 第3に、マレーシアプトラ大学(UMP)を訪問し、担当教授らと意見交換をし、制度の運用、改正見通し等についての情報を得た。同大学ハラル製品研究所(IPPH)では、研究所内部の視察、研究員への聞き取り調査から、食品関連分野(おもに医薬品)についての研究開発動向を把握した。 第4に、国立国会図書館等において、ハラルに製品やハラル分析に関する論文等を入手し、自然科学分野でのハラル研究の動向を把握した。企業や団体からも有益な情報を多数得た。また、昨年度に引き続き、東南アジア諸国全体の経済・産業動向、食品などの物価動向についての資料・情報を収集した。これらは、食品周辺分野のハラル製品の普及と経済・社会の関係を分析するための必須の情報である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間で、東南アジアの3か国(マレーシア、インドネシア、シンガポール)を現地調査し、経済・産業の動向、食品周辺分野(食品容器、サプリメント、機能性食品、化粧品、医薬品)のハラル製品の普及動向・制度およびその背景にある経済動向について、多数の有益な資料・情報を得た。その結果、この3か国については、本研究の目的である「食品周辺分野のハラル製品の普及動向とその背景にある経済動向の関係」について、その概略を把握できた。 ただし、平成29年度は、当初計画で予定していたオーストラリアの現地調査に替えて、マレーシアの調査を2回実施した。マレーシア国際ハラル見本市(MIHAS 2017)、マレーシアプトラ大学(UMP)における情報収集である。 MIHASにおける情報収集は、当初計画では、4年目(平成31年度)に予定していた。しかし、ハラル製品の製造・流通過程における国際移動が多いことがわかり、対象5カ国以外の国についても幅広く情報を収集し、研究の早い段階で、世界の大きな傾向を把握する必要性を認識したため、前倒しした。また、UMPおよび同大学ハラル製品研究所(IPPH)における、ハラル担当教授およびハラル医薬品の研究員との意見交換をする機会を得たので、これも、平成29年度に実施した。 なお、食品企業、化学企業、認証団体との意見交換により、ハラルの現場情報を多数収集できた。さらに、UMPや国立国会図書館等における文献調査でも、多くの知見を得た。 この2年間で、収集した資料・情報を整理分析して、解説・総説を計7本(学会誌:1本、経済専門誌:6本)寄稿し、それらが掲載された。さらに、当初計画に記載したとおり、企業実務家への講演、大学での特別講義も積極的に行った。講演内容を報告書の形にする他大学の事業に協力し、ハラルに関する知識の普及の一助とした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の3年目である平成30年度は、以下のとおり研究を進める。 シンガポール、オーストラリア、中東について、現地調査、文献調査、インタビュー調査を行い、(1) 食品周辺分野のハラル製品の流通動向、(2)同分野のハラル制度の内容・運用実態、今後の制度化・制度改正の方向、(3)経済・産業動向・食品などの物価動向、に関する資料・情報を収集する。中東については、当初計画ではエジプトを調査対象としているが、直近の治安動向を勘案して、トルコまたはUAEなどの湾岸諸国に変更する可能性、実施年度を繰り下げる可能性がある。 オーストラリアについては、市場調査と併せて、政府管掌の食肉のハラル制度の運用実態についても、さらに詳しく情報収集する予定である。中東においても、市場調査と併せて、食品周辺分野においても、ハラル制度がなく、企業の自己責任でハラルを確保している実態も併せて確認する。 食品企業、化学品企業、ハラル認証団体からの聞き取り、国立国会図書館等における資料・論文の収集にも努めることとする。 また、経済専門誌、学会誌、学術事典への寄稿、企業実務家への講演、大学・大学院での特別講義などにも積極的に取り組むこととする。 平成31年度は、シンガポールとマレーシア国際ハラル見本市(MIHAS 2019)の再調査を行う。平成32年度には、必要に応じて海外調査も行い、これまで収集した資料・情報を分析し、成果を論文としてまとめて、発表する。なお、シンガポールは、自由貿易都市であり、各国の幅広い分野のハラル製品が流通し、その傾向は時系列で変化している。このため、同地は、幅広い情報、有益な知見を取得できる地である。日程的に可能であれば、他国への現地調査の経由地としても訪問し、調査を実施する。
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