2016 Fiscal Year Research-status Report
農産物の市場価値を高める認証・表示制度の国際比較研究:途上国・移行国における検討
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16K07912
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
弦間 正彦 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90231729)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 農産物 / 認証制度 / 表示制度 / 経済実験 / 市場価値 / 差別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中東欧諸国などの新規加盟国を含むEU現加盟国と、東南アジアの体制移行国・途上国・中所得国など1990年代に新規に加盟した国を含むASEAN加盟国の農産物・食料部門に焦点を絞り、地理的表示制度、有機農産物認証制度、トレーサビリティ制度、等級表示制度、検疫制度などの新たな導入に際して、それらの制度が必ずしも農産物・食料の市場価値を高めるに至っていない理由を検証し、これらの制度が農業発展と食料の安全保障に貢献するための条件を考察することが目的である。 第1年度(平成28年度)は、まず文献のサーベイ、郵便による予備資料の収集、電子メールを通じて海外共同研究者(タイ・カセサート大学、ポーランド・ヴァルミア・マズーリ大学、ハンガリー・エドゥトス大学の研究者)からの情報・データ提供を受け、これらの国の食料経済、地理的表示制度を中心に認証・表示制度の発展の経緯について文章で取りまとめる作業を行った。その上で、聞き取り調査用の質問状、地理的表示(GI)制度の持つ経済価値を、タイにおいては2008年にGIに認証された東北地域で栽培されるジャスミン米の事例について、ハンガリーにおいては2007年にGIに認証されたSzegedサラミと、ハンガリー政府による認証制度で「伝統的農産物」に認定された伝統的野菜について、非仮想的な設定に基づく実験オークション法(現実の市場に近い状況をラボにおいてつくりだした上で被験者の支払意志額を入札額として観察する方法)により計測するための質問票などを用意した。その上で、関係機関、組織、専門家に対して聞き取り調査を行い、またタイとポーランドにおいては、パイロット的な経済実験を行い質問表と経済実験の枠組みをそれぞれ設定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東南アジアの中所得国と、欧州のEU新規加盟国について、本格的な経済実験を行うための質問表と経済実験の枠組みを、制度の事前調査とパイロット的な経済実験を通じて設定することができた。ただし、当初予定していたハンガリーにおけるパイロット実験は、現地の受け入れ機関である大学の都合で、その実施が翌年度となった。代替的に、ポーランドにおいてパイロット実験を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
タイと、ポーランド、ハンガリーにおいては、対象農産物・食品を増やした形で、本調査を行う。さらに、東南アジアにおいては、ラオスとベトナムにて、同様な経済実験によって地理的表示制度、有機農産物認証制度、トレーサビリティ制度、等級表示制度などがもつ経済価値を明らかにする作業を続ける。さらに、地理的表示制度、有機農産物認証制度、トレーサビリティ制度、等級表示制度を適用した場合の国内市場における支払い意志額(WTP)にどの程度のプレミアムが発生するのか、仮想的な状況を想定して支払意志額を推計する仮想評価手法(CVM)を利用しても確認する。ラオスとベトナムにおいては、GIに指定された農産物は少なく、認証・表示制度に対する認知度が低いが、ASEAN Free Trade ZoneやTPP(ベトナムの場合)などへの加盟に伴い、今後食料経済における大きな変化が予想されることから、CVM手法による支払意志額の確認は、どの制度を優先させて導入するのかという政策的な課題に対する答えを用意することになる。また、同じ農産物について、所得水準がラオスやベトナムに比べ高いタイにおいても被験者を募り、CVMを用いて支払意志額と属性に関するデータの収集を行う。この国際比較により、所得水準と食文化の違いが支払意志額に及ぼす影響に関する理解が進むと考える。異なった国の間で、支払意志額が有意に違う場合には、さらに、分析対象農産物・食品を広げて、調査にあたる計画である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたハンガリーにおけるパイロット実験は、現地の受け入れ機関である大学の都合で、その実施が翌年度となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していたハンガリーにおけるパイロット実験は、翌年度に当初の計画内容通りに行う。
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Research Products
(8 results)