2016 Fiscal Year Research-status Report
社会経済的要因が世帯における食料へのアクセスと利用、健康状態に及ぼす影響
Project/Area Number |
16K07914
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
清原 昭子 福山市立大学, 都市経営学部, 准教授 (20351968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 由喜子 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (40310841)
福井 充 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40173322)
山口 道利 龍谷大学, 農学部, 講師 (40709359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会経済的要因 / 食物アクセス / 食物摂取 / 栄養摂取 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、世帯の社会経済的要因(世帯内で食物を入手する人の要因、食べる個人の要因)と食物アクセスが相互にどのような関わりを持ちながら、食生活、栄養、健康状態に影響を与えるのかを以下の課題解明を通じて明らかにしていく予定である。 (1)国内外の先行研究において、これらの要因相互の関連とその結果である食料消費・食物選択、そして食事摂取や栄養状態への影響がいかに検討されているか確認する。これにより、社会経済的要因と食物アクセス、利用、消費、栄養、健康状態を接続した仮説モデルを作成する。 (2)個人および世帯の社会経済的要因(所得、就業状態、教育水準など)、食料品へのアクセス(食料購入に向けられる所得、生活のゆとり、食料購買機会への近接性など)について、政府統計、その他の既存データを用いて(1)の仮説を統計的に検証する。とくに、個人・世帯の社会経済的要因がアクセス、利用の各要素のいずれに結びつくのか、具体的に検証する。 (3)上記(2)までのプロセスによって、開発、検証されたモデルをアンケート調査あるいは実態調査によって確認する。対象者の選定や絞り込みについても(2)の作業および研究会による議論を通じて行う。さらに(4)では上記(1)~(3)の結果を受け、食品小売業の出店に関わる地域流通政策による食料購買機会へのアクセスを向上させる施策は、どこに住む、どのような人々に提供されるべきか、提言する。そして健康的な食生活への関心や食物選択のための知識、技術に関わる情報の伝達などの栄養教育を、どのような状況におかれた人々に提供すべきか、提言する。 平成29年3月末時点で、(1)について情報収集と整理が終了し、(2)については1件の解析が終了し、さらに1件の解析作業が進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)については、農業経済学分野、公衆栄養学分野を中心に国内・国外の既存研究をサーベイし、各分野での研究について、課題設定と分析方法、成果について比較・検討した。その結果、対象者の属性(子どもおよび子どものいる世帯、高齢者世帯)別に未解明の課題が残されていることが明らかとなり、今後の調査における項目設定の基礎となる情報を得た。また、食料品店への地理的距離等で示される「食物アクセス」と世帯内の社会経済的要因の関連についても、既存研究を分野別に比較することで知見を得た。以上の成果は本年6月開催の日本フードシステム学会において報告予定である(清原・山口・上田 他)。 また、先行研究から食料アクセス上、不利な立場に置かれているとされる高齢者および病者について、それらの人々をターゲットとした食料品(高齢者/病者用食品)のサプライチェーンに関する文献およびヒアリング調査を実施した。これにより、在宅介護、自宅療養向けの新たなサプライチェーンが確立されたことを確認し、その課題を指摘した。この成果は2016年度の日本フードシステム学会において報告の上、『フードシステム研究』に報告論文として掲載された(大宮・清原)。 (2)については、厚生労働省「国民健康・栄養調査」、「国民生活基礎調査」の個票データを用いて所得、所得の種類、親の教育歴、家族構成等の社会経済的要因(SES)と食物摂取、栄養素摂取の関連性を検討した。子どもおよび子どものいる世帯についてのデータの解析は終了し、本年中に国際学会において報告予定である(上田・福井・山口・清原)。また、全世帯のデータについての解析作業を現在進めており、世帯のSESと食物摂取、栄養素摂取の関連性を検討した結果を同じく本年中に国際学会において報告予定である(清原・福井・上田)。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果から得られた、本テーマに関する未解明の課題、つまり子どものいる世帯、高齢者世帯それぞれの未解明項目、および食物への地理的アクセスとSES要因をあわせた調査項目について、今年度は(3)の調査を行う。調査項目および調査対象について、研究グループで綿密な打ち合わせを行い、実施可能性も含めた実施計画を策定する。アンケート調査方法を実施後、結果を整理・分析し、次年度以降、論文、学会報告等の形で発信していく予定である。 地理的な食物アクセスと世帯のSESを同時に把握するためには、調査地点を特定した(例えば、一自治体内)質問紙調査が望ましいと考えられるが、実施にあたっては配布方法および回収率の維持に大きな困難が予想される。自治体や地域福祉団体との連携によってこれらの課題をクリアできるよう、方法を検討中であるが、実施が困難な場合にはインターネット上での調査も選択肢として視野に入れている。 また、最終年度には以上の結果を受け、(4)の社会的提言を行う予定である。具体的には食品小売業の出店・退店に関わる地域流通政策や地域コミュニティの機能の維持に関する提言等を行い、食料購買機会へのアクセスを向上させる地域政策のあり方を提言する。そして、健康的な食生活のための資源が欠落した人々への社会的支援やその対象について提言する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度の調査・研究により、平成29年度以降の大規模調査は実地の質問紙調査による方が研究目的にあうデータを収集できると判断した。この場合、調査協力者および回答者に謝礼が必要となると予想される。また、実地の質問紙調査が実施困難な場合はインターネット調査も必要と判断したため、このための予算を翌年度に繰り越す必要性があると考えた。 また、アンケート調査結果を解析するために、専用のパーソナルコンピュータが必要となることを予想したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度以降には年度は家計の社会経済的要因(所得、教育水準、勤務状況)および食料品店へのアクセスと食物摂取状況を同時に把握する調査を実施する予定である。これらは先行研究から、アンケート調査への協力が得られにくい質問項目を含む。分析可能な回答率を維持するために、回答者への謝金(70万円)ならびにアンケート票の配布・回収に必要なマンパワーに対する謝金(約10万円)が必要となる。一方、インターネット上でのアンケート調査実施の場合、80万円が必要となると積算している。 また、これら大量調査の結果を整理、分析するための専用パーソナルコンピュータに約20万円を積算している。
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