2016 Fiscal Year Research-status Report
カウフマンのNKモデルを用いた農商工連携関係構築モデルの策定
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16K07917
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
大西 千絵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター 企画部, 主任研究員 (60466638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森嶋 輝也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター 作物開発利用研究領域, 上級研究員 (30391486)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 農商工連携 / 連携の相乗効果 / カウフマンのNKモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
熊本県「農畜産物直販ネットワーク」の取り組みについて、開発商品ごとに取り組み内容と使用している経営資源や、取り組みにおける経営資源の組み合わせの時系列変化を整理した。そして、その中でもサラダたまねぎを用いた取り組みに着目し、連携による相乗効果について検討した。 本研究では、連携による相乗効果について、カウフマンのNKモデルを用いて明らかにする。NKモデルでは、連携の組み合わせごとにパラメータを設定し分析を行うが、パラメータをどのように設定するかが問題となる。そこで、自己組織化マップの手法を援用し、マップ上の距離を用いたパラメータ化が有効ではないかと考えた。 自己組織化マップとは、データの類似度の高低をマップ上で可視化して示すものである。類似度が高いデータ同士は近距離に、低いと遠距離に示される。サラダたまねぎを使った取り組みの数事例について、生産A、一次加工B、複次加工Cの3主体について自己組織化マップで可視化したところ、いずれの取り組みについても、(1)AとCだけの連携(距離AC)より、AとBとCの連携(距離AB+BC)のほうが経済効果は大きい、(2)距離ACが等しい場合、距離AB+BCが大きいほど、経済効果はより大きくなる、(3)継続性の高い取り組みは、AB、BC、ACの距離が等しい傾向にある、ということが明らかになった。このことから、相乗効果のパラメータ化に自己組織化マップの援用が有効ではないかと考えられる。 しかし、自己組織化マップでは、マップ上の中心では相対的に距離が小さく、外縁では相対的に距離が大きくなる傾向がある。そこで、今後は、マップ上のどの地点間の距離も等しく表すことができる球面自己組織化マップという手法を用いて相対効果のパラメータ化を試みる。 また、平成28年度は、後発事例である沖縄県・宮古島の農商工連携の事例について、現地調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来、平成28年度は、取組みの特色や国が異なる4つ程度の農商工連携の事例について調査を実施する予定であった。そして、調査結果をもとに、NKモデルを用いて連携による相乗効果の相違点を明らかにすることになっていた。 しかし、平成28年度は、研究代表者が拠点とする熊本県において4月に地震が発生し、それに伴う研究棟からの避難・引越し、交通手段の制限があり、調査の実施や研究の遂行に支障が出た。また、10月以降、研究代表者の2ヶ月間の病休と業務調整により、研究・調査に割ける時間が大幅に減少した。そのため、研究は計画から大幅に遅れている。特に現地調査の実施が不十分であった。 モデルの検討については実施可能であったため、入手可能なデータをもとに、モデルのプロトタイプの策定を実施した。具体的には、連携による相乗効果について、カウフマンのNKモデルを用いるために、パラメータの設定方法について検討を行った。いくつかの方法を検討した結果、自己組織化マップによるデータの類似性からパラメータを設定する方法がうまくいった。このパラメータの設定方法の検討は、平成28年度から平成29年度にかけて実施する予定であったため、この部分においては、研究は順調に進んでいると言える。 このように、モデル策定の部分はおおむね予定通り順調に進展しているが、データ収集やデータ分析の部分では遅れている。これらを鑑みて、全体として「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は遅れている現地調査を実施していく予定である。具体的には、平成28年度に実施した熊本県の先行事例、沖縄県・宮古島の先行事例に関して追加調査を実施するとともに、その他の先進事例や後発事例の農商工連携の取り組みについても現地調査を実施する。 調査結果をもとに、球面自己組織化マップを用いてNKモデルのための相乗効果のパラメータ化を行う。自己組織化マップでは、各データの属性をもとに類似性を決定する。平成28年度のサラダたまねぎの事例については、農商工連携の参画主体について、生産・一次加工・複次加工・販売などの役割、参画主体の立地、参画における志向(農業・地域支援志向かビジネス志向か)を属性として分析を行った。今後は、属性の見直し等を行うとともに、球面自己組織化マップ上の距離と実際の経済効果とを比較し、パラメータの有効性を検討する。 得られたパラメータを用いて、農・商・工の連携による相乗効果について、NKモデルを用いて明らかにする。NKモデルとは、N個の遺伝子がK個の対立遺伝子から影響を受けると考え、ある遺伝子と対立遺伝子との相乗効果をもとに、遺伝子ネットワーク全体のパフォーマンスを解明するものである。本研究では、N種類の経営資源がK種類の経営資源との間に相乗効果を生み出すものとして、農商工連携ネットワーク全体のパフォーマンスを解明する。 そして、NKモデルにより求めた相乗効果を、「適応度を導入したシミュレーション・モデル」に組み込んだ農商工連携関係構築モデルを策定する。策定したモデルを他の後発事例に適用し、取組みの継続・発展を図るためのネットワーキング方策を検討する。取組みの発展方向の提示については、カウフマンの超立法体を用いる手法を用いる。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、4月の熊本地震とそれに伴う研究棟からの避難・引越し、交通手段の制限があり、調査の実施や研究の遂行に支障が出た。また秋以降、研究代表者が2ヶ月間の病休とそれに伴う業務調整により、研究・調査に割ける時間が大幅に減少した。特に秋以降は調査の実施が困難であったため、モデルのプロトタイプ策定のみを行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査によるデータ収集が必須であるため、平成29年度は遅れている現地調査を実施していく予定である。それと並行して、モデルの検証も実施する。ただし、現地調査は健康状態を鑑みながら無理のない範囲で遂行し、平成29年度に調査しきれなかった場合は、平成30年度に調査を実施する予定である。そのため、入手できる範囲でのデータを用いて前倒しでモデルを策定し、調査データを用いてモデルを検証していくという研究方式への変更を予定している。
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Research Products
(2 results)