2016 Fiscal Year Research-status Report
アフリカにおける土地制度改革の社会制度・システムに与える影響に関する研究
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16K07920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 浩敬 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任准教授 (50451901)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | サブ・サハラ・アフリカ / ルワンダ / 家計内資源配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ルワンダ共和国(以降、「ルワンダ」)を対象に、土地制度改革の社会制度・システムへの影響について明らかにし、制度設計および効果的な貧困緩和戦略について考察を行うことを目的としている。本年度は、土地利用データ(GIS データ)の収集、土地制度改革の歴史的変遷に関する政策文書等の収集、農業生産に関するデータの収集、コミュニティレベルの紛争調停の裁判制度である「アブンジ」の記録の収集、調査票の設計・作成、家計調査を実施することを計画していた。以下、「現在までの進捗状況」に詳細を述べるように、本年度の計画はほぼ達成されたと同時に、労働時間に余剰があり、農業へのさらなる労働投入のインセンティブがあるにも関わらず、急激な人口増加に伴った一戸当たり土地資源の減少のため、それが叶わない状況が明らかとなった。また、ルワンダ政府が推進する、避妊政策に基づく、避妊注射やインプラント等のホルモン由来の避妊法の副作用による、母親の農業や家事への従事が困難となっている実態も浮き彫りになった。すなわち避妊により、家計内の資源配分の状況が変化している。以前度以降は、当初の計画に加え、これらの家計内資源配分の変化の家計の厚生に与える影響についても調査・研究を実施していく。本年度の研究成果については、二つの国際会議(2017 AAEA(Agricultural & Applied Economics Association) Annual Meeting, IPC(International Population Conference) 2017)および一つの国内学会(日本人口学会 69回大会)にて報告することが決定している。次年度はこれらの報告に基づき論文を執筆し、投稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
先述のように、本年度は、土地利用データ(GIS データ)の収集、土地制度改革の歴史的変遷に関する政策文書等の収集、農業生産に関するデータの収集、コミュニティレベルの紛争調停の裁判制度である「アブンジ」の記録の収集、調査票の設計・作成、家計調査を実施することを計画していた。本研究は、主な調査対象地として、ルワンダ共和国・東部州・カヨンザ県のルカラセクターおよびムイリセクターを選定している。これらの地域について、まずルワンダ政府が推進する土地所有データの整備に基づき、関連省庁より土地所有に関するデータを取得した。また同時に農業生産に関するデータも収集した。アブンジの記録については、コミュニティレベルの情報について所在を確認し閲覧することができたが、県レベルでの集計データが収集されていることが明らかとなり、現在、関係機関にデータの提供を依頼中である。また、本年度9月(2016年)、および3月(2017年)に、ルカラセクター、ムイリセクター内の村落における家計、それぞれ120戸を対象に家計調査を実施した。本調査から、開発途上国農村家計における代表的な資源である労働時間に余剰があり、さらに住民も農業へのさらなる労働投入のインセンティブがあるにも関わらず、高い合計特殊出生率(TFR: Total Fertility Rate)、他地域からの移住、および1994年の大虐殺時を頂点とする内戦等に起因する周辺諸国の難民キャンプからの帰還民の流入による急激な人口増加に伴った一戸当たり土地資源の減少のため、それが叶わない状況が明らかとなった。また、高いTFRを抑制するための政府による避妊政策が浸透しているものの、住民に嗜好される避妊法である注射法やインプラント等のホルモン避妊薬による副作用で、母親の農業や家事への労働投入が阻害される実態が把握された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に収集したデータを用いた農業総要素生産性の計測、アブンジの記録を用いたコミュニティレベルの土地紛争に関する分析、および本年度に引き続いた家計調査を実施する予定である。また、当初想定していなかった、避妊の副作用による母親の家計内資源配分の変化が、農業生産や出生行動、それらを含む家計の厚生に与える影響について理論および実証双方での分析を試みることとする。また本年度の成果を国際誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
季節性を考慮するために調査時期を年度の区分に制限されない使用を検討する必要があり、さらに、現在、関係機関に依頼しているデータ取得に関する支払が本年度中に終了しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査については次年度9月に実施する予定であることから、その時期に支出する予定である。また、データに関する支出については、当該データが取得され、関連する費用が確定次第、使用する。
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[Journal Article] Development and Validation of a Data-Based Food Frequency Questionnaire for Adults in Eastern Rural Area of Rwanda2016
Author(s)
Yanagisawa, A., Sudo, N., Amitani, Y., Caballero, Y., Sekiyama., Mukamugema, C., Matsuoka, T., Imanishi, H., Sasaki, T. and Matsuda, H.
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Journal Title
Nutrition and Metabolic Insights
Volume: 9
Pages: 31-42
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Contraceptive Use in the Rural Economy: A Case Study of Eastern Province of Rwanda2017
Author(s)
Shimamura, Y., Matsuda, H., Sekiyama, M., Abaho, T., Aoun, N. and Geetha, M.
Organizer
International Population Conference
Place of Presentation
Cape Town, South Africa
Year and Date
2017-10-29 – 2017-11-04
Int'l Joint Research
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[Presentation] Dynamics of bargaining power for contraceptive use and Intra-household resource allocation in the rural household of Sub-Sahara Africa - A case study in rural area of Rwanda-2017
Author(s)
Matsuda, H., Shimamura, Y., Aoun, N., Geetha, M., Sekiyama, M. and Abaho, T.
Organizer
International Population Conference
Place of Presentation
Cape Town, South Africa
Year and Date
2017-10-29 – 2017-11-04
Int'l Joint Research
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[Presentation] Impact of intra-household resource allocation on bargaining power for contraceptive use in the rural household of Sub-Sahara Africa: A case study in rural area of Rwanda2017
Author(s)
Matsuda, H., Shimamura, Y., Aoun, N., Geetha, M., Sekiyama, M. and Abaho, T.
Organizer
AAEA Annual Meeting
Place of Presentation
Chicago, U.S
Year and Date
2017-07-31 – 2017-08-01
Int'l Joint Research
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