2017 Fiscal Year Research-status Report
農民組織が未発達な開発途上国における農業技術の定着を導く要素に関する研究
Project/Area Number |
16K07921
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
浜野 充 信州大学, 学術研究院農学系, 講師 (30626586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 香純 名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 准教授 (10467334)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 技術採用状況調査実施 / 研修参加農家と非参加農家への調査 / データ入力 / 分析の実施 / 定量的データの分析方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンボジア・タケオ州内2郡6コミューンにおいて、米蒸留酒造農家を対象に、酒の品質改善のために見いだされた改良技術を普及し収入向上を目指す研修事業が2011‐2013年に実施された。研修は、一連の技術を指導しある程度の技術定着を目指す基礎研修と、品質管理・工程管理を徹底し製品の差別化による付加価値化を目指す上級研修と段階的に参加を希望できる形で実施された。 本研究では、研修後の技術使用状況や販売方法の変化を把握し、それらが生産性や収益性に与えた影響を明らかにするとともに、農家が技術を採用し継続して使用する要因を検討することを目的とする。 2016年度は、対象地域の研修参加農家と非参加農家に対して、使用技術、労働時間、販売方法、経営収支などの項目をまとめた質問票を用いて、インタビュー調査を実施した。2017年度は、補足調査およびデータ入力結果の精査を行い、関係者間で確認作業を実施した。確認作業に時間がかかり、当初の予定より分析の進捗が遅れているが、引き続き、研修参加者と非参加者のデータについて比較分析を進めている。 酒造経営と密接に関連する生業として、すべての農家が蒸留かすを餌として養豚を営んでいるが、その経営状況の変化も酒造経営の継続や技術採用に影響を与えると考えられる。補足的な調査として、地域の養豚業の現状についても調査を実施した。 上級研修を修了した農家の中で、対象の農村地域での付加価値販売や都市部市場への販売を、複数の農家が継続していることが確認された。高品質酒の市場動向は酒造の販売・経営に影響を与えるため、その傾向をつかむべく既存情報の収集を行った。引き続き、より詳細な調査の実施を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度に、酒造研修参加者と非参加者を対象とした調査を実施し、データの入力を進めた。2017年度に入り、引き続きデータ入力を行い、データを精査した。カンボジア王立農業大学と日本の関係者間で、調査データの確認や入力データと分析データの照合に、当初予定していたよりも多くの時間を要した。 その後、引き続き、酒造研修参加者と非参加者のデータ分析を進めており、データの定量的な分析結果については、学会で共同報告を行うとともに、その後、さらに分析を進めている。また、2018年度には、技術採用や経営戦略に関する農家の意識調査や、情報交換・情報入手の手段の変化などの定性的なデータに関する調査を実施する予定である。 一方で、ほぼすべての酒造農家が蒸留かすを餌として営む養豚業の経営状況や、農村部・都市部の高品質酒(蒸留酒)市場における需要の変化が、経営状況や技術採用のインセンティブに影響を与える重要な周辺要因として考えられたため、それらの現状や変化について2017年度より調査を開始し、引き続き進めていきたいと計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、引き続き研修参加者と非参加者のデータを比較分析し、両グループの技術使用状況に差があるかどうか、それにともない生産性や収益性、労働時間等について差があるかどうかについて検証する。 それぞれの改良技術ごとに、技術を採用した農家数、採用しなかった(もしくは採用を取りやめた)農家数を取りまとめ、それぞれの技術の採用割合を明らかにする。同時に、労働時間や生産性、利益率・収益性、販売価格との相関を検証し、それぞれの技術の特性を検討するとともに、農家における技術採用のインセンティブや要件を検証する。 同時に、現在の経営課題や技術課題、将来の経営の発展や技術改善に対する考え、技術情報や市場情報の入手方法や農家間・専門機関とのネットワークの構築およびコンサルテーション・情報交換の現状、経営戦略や社会的ネットワークの構築、電気・道路・通信手段などの社会的インフラの変化など、定性的なデータの取得のための調査を実施する。一方で、酒造経営に関連する市場状況の変化や養豚業の経営状況・市場状況の変化についても調査を行い状況把握に努める。それらの情報を含めて、改良技術の採用と不採用の要因について検証を行う計画である。 上述した定量的・定性的データの分析をふまえて、農民組織がほとんど機能していないカンボジアの農村において、農業技術を定着させるための要素を明らかにし、より効果的な技術普及の方法について検証を行う。研究成果については本分野に関連する学会で報告を行うと同時に、学会誌に投稿するための論文を作成し社会に発信する。また、カンボジアの王立農業大学を中心にした農業教育・研究機関において、研究成果を報告するとともに、同大学の教育カリキュラム・シラバスの一分野として取入れ、本研究に関連する実践的研究の継続について、関係者とともに検討する計画である。
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Causes of Carryover |
2016年のデータの精査と確認作業に時間がかかり、データ分析の作業が遅れた。それらが、農家の経営戦略や技術への印象などの意識調査(定性的データ)の実施が遅れ、次年度使用額が生じた主要要因である。 2018年は引き続きデータ分析を行いつつ、予定していた定性的な情報収集のための調査を実施するとともに,酒造の収入や技術採用に関係する高品質な蒸留酒市場の変化についての調査を実施し,それぞれの調査・分析結果をまとめる予定であり,調査のための旅費や調査補助員雇用のための人件費,データ分析補助のための人件費,学会発表などのための旅費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)