2016 Fiscal Year Research-status Report
オランダ農業モデルの批判的検証とオルタナティブ・モデルの可能性
Project/Area Number |
16K07922
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久野 秀二 京都大学, 経済学研究科, 教授 (10271628)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | オランダ農業 / フードバレー / 農業競争力 / オルタナティブ農業 / ワーヘニンゲン大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は選択と集中による効率的経営と規模拡大を通じた輸出志向型の農業工業化、産官学連携による関連産業・支援産業のクラスター化(フードバレー)を特徴とするオランダ農業に着目し、それを日本農業の「活性化策」「競争力強化策」の参考モデルとみなす政策論的言説の批判的検証を試みると同時に、オランダで同時に追求されてきた多様なオルタナティブ農業の有効性と可能性の中から日本農業の方向性について一つの視座を確立しようとするものである。 平成28年度は、第一に、本研究に関する問題意識と情報を共有するため、オランダの研究協力者と複数回にわたり打合せを行った。第二に、日本国内で流布されている「オランダ農業モデル」論を整理すると同時に、日本で紹介されていない「オランダ農業モデル」をめぐるオランダ国内での議論や研究動向について文献調査を行った。第三に、研究協力者らと共同で現地予備調査を行い、「オランダ農業モデル」の評価について関係者・関係機関へのヒアリング調査を実施し、論点を整理した。それを踏まえ、オランダ・ワーヘニンゲン大学の大学院生にグループワークとして課題を提示し、オランダ農業モデルとくにフードバレー事業に関する調査報告書を作成した。第四に、研究協力者が指導する大学院生が来日した折、日本でフードバレー構想を進めている新潟市を一緒に訪問し、関係者へのヒアリング調査を実施、調査報告書を作成した。なお、研究協力者の招へい、研究協力者が指導する大学院生の招へい及び国内現地調査については、スーパーグローバル大学創成支援事業の一環として京都大学とワーヘニンゲン大学との間で進めている国際連携教育プログラムにも関わるため、その関連予算を充当することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って文献調査、1回のオランダ現地予備調査、1回の国内現地調査を実施したが、本格的なオランダ現地調査を実施するには至らなかった。そのかわり、研究協力者が所属しフードバレー事業の中軸でもあるワーヘニンゲン大学の大学院生向けグループワーク課題として調査報告を委託し、十分な量と質の情報や理論的考察を含んだ報告書を作成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、第一に、これまで実施した先行研究調査、予備的現地調査、委託調査の結果を踏まえ、日蘭両国の「オランダ農業モデル」に関する言説分析を行うとともに、その成果をコンセプト・ペーパーとして国際学会等で発表するための準備を進める。第二に、オランダ農業の典型モデルおよびオルタナティブ・モデルに関する現地調査と実態分析を行う。資料整理および英文校閲等のために研究補助員を雇用する。そして、最終年度の平成30年度には、それらの成果を国際学会等で発表するとともに、国際学術誌に国際共著論文として投稿するための準備を進める。第三に、「オランダ農業モデル」論の批判的検証は国内農業政策をめぐる議論にも大きなインパクトを与えると予想される。そのため、成果の一部を日本語の論文あるいは論説として発信し、農政論議に一石を投じたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
オランダ農業モデルに関する文献調査をもとに現地本調査の準備を進め、平成29年2~3月に現地本調査を実施し、オランダ現地調査の成果をとりまとめ、来年度の事業計画に備える予定だった。しかし、平成28年11月、前月に打合せを行った研究協力者の助言に従い現地大学院生のグループワークとして現地調査を依頼することになった。さらに同年12月、本学の冬期講座に参加した研究協力者の大学院生とオランダ農業モデルの国内事例(新潟:冬期講座関連の事業予算を充当)を調査する機会を得た。これらの追加調査により多くの情報と知見を得たが、そのとりまとめに時間を要しており、また、その成果を踏まえたより詳細な現地調査(当初計画は平成29年3月)を準備する必要が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
別の事業予算で招へいを予定しているワーヘニンゲン大学研究者(研究協力者の同僚)と国内で関連調査を実施するとともに、6月下旬から7月上旬にかけて予定している別事業でのオランダ訪問の際に現地補足調査を実施するために、次年度使用額と充当する。平成29年度配分予算については、当初計画通り、オランダ農業の典型モデル及びオルタナティブ・モデルに関する現地実態調査の実施と、研究成果とりまとめに雇用する研究員の謝金に充当する。
|
Research Products
(8 results)