2016 Fiscal Year Research-status Report
アントレプレナーエコシステム論を適用した福祉農業の展開過程の国際比較研究
Project/Area Number |
16K07923
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂本 清彦 京都大学, 農学研究科, 特定准教授 (30736666)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 福祉農業 / 農福連携 / アントレプレナーエコシステム / アントレプレナー / イノベーション / 農業経営体の社会貢献型事業 / 新自由主義 / Hybrid Assemblage |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、次年度以降の現地調査の基盤構築のため、国内の福祉農業・農福連携事業体の現地調査を行うとともに、アントレプレナーエコシステム論やイノベーション論等を中心に、農業経営学や農業・農村社会学分野の文献サーベイを実施した。これにより、農業と福祉という異分野を結合して新たな価値を生むイノベーション(革新)としての福祉農業・農福連携事業の課題を把握し、先進地オランダでの現地調査で確認すべき事項を整理した。特にイノベーションを可能にするアントレプレナーエコシステムを構成する支援諸制度の比較検証上の焦点化を図った。 文献調査による理論面での成果として、アントレプレナーエコシステム論やイノベーション論と緊密に関連し福祉農業・農福連携の社会政治経済的背景と考えられる新自由主義や、類似する農業経営体の社会貢献事業を検証し、複数領域にまたがる制度や技術の複合体(Hybrid Assemblage)としての福祉農業・農福連携事業が、相反する合理性基準に直面しうることなどを指摘した。また革新的経営を展開する先進的農業経営体と地域社会との関係についても論じ、福祉農業・農福連携事業展開の分析への適用を図った。これらの成果は複数の論文や学会において公表した。さらに農林水産省近畿農政局と農福連携事業推進シンポジウムを共同で開催し、関係者と知識・意見の交換を行った。 なお、海外及び国内での予備的調査は、研究代表者の所属先に入学し同じテーマを研究する社会人大学院生との調整の結果、スケジュールと調査地を変更することとした。当該大学院生は、業務を通じて大阪府内の福祉農業・農福連携事業体に既につながりを持っており、協力して調査を進めることで研究を効果的に実施できると判断したためである。したがって、平成28年度の国内調査は大阪府や京都府の事業体を中心に行い、海外調査は学会における情報収集を中心に行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究進捗がやや遅れている主な理由は、平成28年度に研究代表者の所属先(京都大学大学院農学研究科生物資源経済学専攻)に、福祉農業・農福連携をテーマに学位取得を目指して入学し社会人大学院生と研究上協力していくことが極めて有効であると判断し、当該学生と共同で現地調査を行うため一年目の海外調査を二年目に変更したことである。他方で、地方自治体の行政官として福祉農業・農福連携事業に関わってきた当該大学院生との協力関係が築けたことにより、既に彼がつながりを持っていた事業体へのアクセスや、制度面での知見獲得が容易になったこと等、予期しない形で研究進捗があった面もある。これらの点を総合的に考慮して、研究の進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前項で述べたとおり、海外現地調査を二年次に変更して実施することとし、当初予定からやや遅れた面がある。他方で、既に日本国内での福祉農業・農福連携事業について知見を持つ大学院生との協力関係を築いたことで、国内・海外調査に当たって必要な、支援制度や経営技術等に関する比較上の焦点を明確化することができたため、平成29年度6月に実施するオランダでの現地調査が効率的に進められると期待される。アメリカ合衆国における現地調査は、他の研究プロジェクトでの調査とあわせて9月に行う予定で、本報告作成時点において調整中である。さらに、オランダとあわせて欧州における福祉農業・農福連携事例としてフランスでの調査を予定しており、これも調整を進めている。 国内調査についても先に述べたとおり、これまで現地調査を行った大阪府や京都府における福祉農業・農福連携事業体の調査分析を継続するとともに、当該大学院生が調査を行ってきた岡山県などで事業体への調査を実施し、国内地域間の比較検証を行ってオランダ等の海外調査成果の立体的な理解に努める。 また文献や政策文書の調査検証を中心とした理論面での分析も初年度同様進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
共同で調査を実施することとなった大学院生(研究協力者)とのスケジュール調整の結果、オランダ及びアメリカ合衆国での現地調査を二年次に行うこととしたため、海外旅費の使用額が予定を下回った。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
一年次に予定していたオランダ及びアメリカ合衆国での現地事例調査は、前年度の予算を利用してそれぞれ平成29年度中に実施することとした。あわせて平成29年度の海外調査用としていた予算を利用して、同年度中にフランスでの現地事例調査を予定している。
|
Research Products
(13 results)