2022 Fiscal Year Annual Research Report
Grasp of the Philippine Uplands by Capitalism from Timber Distribution Point of View
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16K07928
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
葉山 アツコ 久留米大学, 経済学部, 教授 (30421324)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2023-03-31
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Keywords | フィリピン / 育成的林業 / 採取的林業 / 国有林地 / 木材生産 / 木材産業 / 森林再生 / コミュニティ森林管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィリピンは、1980年代以降森林再生を森林政策の最重要課題としている。このこと自体、同国の森林再生政策が機能していないことを示すが、その根本原因へのアプローチとして資本主義による国有林地(山村部)掌握という視点を採用した。 1950年代後半以降70年代まで、国土面積の半分以上を占める国有林地は木材輸出志向の資本主義に掌握され、採取的林業の対象となった。その結果が、天然林面積の大幅減少である。ポスト天然林時代に入り、資本主義は採取的林業に替わる育成的林業を成立させることができたか。1970年代から90年代半ばまでの森林再生政策の中心は産業造林への投資推進であった。天然林時代の採取的林業主体であった企業にポスト天然林時代の育成的林業主体への転換を期待したのであるが、80年代半ば以降、民主化政策の一貫として森林再生政策は国有林地内コミュニティ主体の森林管理へと移行した。 中心的木材産業地であるミンダナオ東北部のカラガ地方における合板会社及び製材所への聞き取り調査から明らかになったことは、主たる木材供給地が国有林地外の私有地であることである。これは、1970年代から推進されてきた企業による人工林造成(産業造林政策)、1990年代半ばから推進されているコミュニティによる人工林造成(コミュニティによる森林管理政策)ともに木材供給地の形成となりえていないということを示す。資本主義による国有林地の掌握という視点からみる産業造林政策の失敗は、天然林面積減少に反応して製材所数が1970年代初頭をピークに急激に減少ししたことによる。一方で、コミュニティによる森林管理政策の失敗は、フィリピン農村の住民組織力と森林管理という長期間の住民行動の制御との不一致に根本の原因があると言える。ただし、コロナ禍のためにカラガ地方での国有林地内コミュニティへの調査が実施できず分析への課題が残った。
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