2017 Fiscal Year Research-status Report
低負荷施肥体系の確立を目標とした積雪地域の樹園地における窒素動態の解明
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16K07932
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
遠藤 明 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (70450278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リンゴ園 / 黒ボク土 / 土壌間隙水 / 硝酸態窒素 / 融雪 / 溶脱 |
Outline of Annual Research Achievements |
青森県内の黒ボク土のリンゴ園地(青森県鶴田町)の深度4, 8, 16, 32, 64, 100cmの6深度(採水管埋設深度)から撹乱土を採取し、陽イオン交換容量およびリン酸吸収係数の土壌化学性を把握した。さらに、各深度から採取した土壌試料を用いて、無機態窒素に関する吸着試験をバッチ法により行い、吸着等線を作成することで、固相―液相における無機態窒素の吸着特性を把握した。このことを受け、灰色低地土・褐色森林土・黒ボク土の3種類の土壌型の調査対象リンゴ園地から溶脱する無機態窒素量を数値解析的に把握するための各種パラメータを整備できた。また、前年度より、当リンゴ園地の採水管埋設深度における体積含水率・バルク電気伝導率・地温を土壌センサー(5TE, DECAGON)により観測するとともに、隔週で当該深度より土壌間隙水を採取し、各種陰陽イオンの濃度をイオンクロマトグラフ法により定量した。今年度は、特に、融雪時期における硝酸態窒素の溶脱挙動に着眼し、体積含水率、間隙水電気伝導率および硝酸態窒素濃度の実測値を用いることにより、改良した数理モデルの検証を行った。土壌センサーを用いた電気伝導率等の諸観測と各種陰陽イオン濃度定量結果からは、融雪期間中において短期間のうちに各イオン種が一挙に溶脱することが明らかになった。また、数理モデルの検証結果からは、土壌間隙水の硝酸態窒素濃度の実測値と計算値が非常に良く一致し、融雪期間中の硝酸態窒素の溶脱挙動を精度良く推定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目において、黒ボク土リンゴ園の窒素溶脱に関する数理モデルの検証が完了したことと、積雪および融雪を勘案した灰色低地土リンゴ園の窒素溶脱に関する基本的な検討課題が解決されたため、上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を推進する準備(土壌調査・計器類の設置・土壌理化学性の測定等)や基本的な検討(数理モデルの改良・検証)が完了した。前年度から引き続き約1~2週間に1回の頻度で、積雪期間も含めてリンゴ園地の土壌間隙水を採取し、試料のpH、電気伝導率、無機態窒素濃度、各イオン種濃度の定量を継続している。採水試料の分析の結果を受けて、施肥・無施肥条件における土壌間隙水の各イオン種濃度に明らかな違いが見られること、施肥した肥料の種類や降水パターンの相違によって土壌間隙水中の無機態窒素濃度に差異が認められたことを受け、今後も引き続き、硝化・脱窒・根による吸収等の現象を含めたリンゴ園地における物質収支を把握する。
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Causes of Carryover |
リンゴ園土壌の間隙水質を測定するためのイオンクロマトグラフ分析装置の消耗品である分離カラムおよびサプレッサー(陰イオン用)の購入に充てる予定であったが、装置使用中に著しく劣化しなかったことを受け、平成29年度中に購入しなかった。研究1年目~実施している土壌間隙水の化学分析において、陰イオン測定用の分離カラムおよびサプレッサーが劣化しつつある。このため、平成29年度使用額B-Aおよび平成30年度助成金の一部を使用して、これらの消耗品を購入予定である。この分離カラムおよびサプレッサーは硝酸および硫酸イオン濃度を定量するために要することから、本研究実施には必要不可欠なものである。なお、カラムやサプレッサーは急に劣化することがあるため、劣化状況によっては陽イオン分析用の分離カラムおよびサプレッサー購入に充てる可能性がある。
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