2016 Fiscal Year Research-status Report
「農業用ため池堤体」の構造的安定性評価法確立を目指した調査と検証
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16K07933
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
森 洋 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (20631493)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ため池堤体 / ため池一斉点検 / ベーンコーンせん断試験 / 一面せん断試験 / スウェーデン式サウンディング試験 / 円弧すべり手法 / 構造的安定性評価 / 地盤物性値 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業用ため池は全国に約21万ヵ所あると言われているが、どのような地盤材料で築堤されているのかは殆ど分かっていない。1ヵ所毎に多額な予算と多くの時間をかけた大掛かりな調査を実施していくことは非現実的であるため、出来るだけ簡易に地盤材料物性値を把握する事が重要である。そこで、本研究では、新たな調査手法であるベーンコーンせん断試験と一面せん断試験による現場試験を、H28年度とH29年度の2年間かけて実施し、それらの結果から円弧すべり手法による構造的安定性評価をH30年度に検討する。最終年度のH31年度には、ため池一斉点検による構造的危険度評価と円弧すべり手法による構造的安定性評価を比較・検討するものである。 【平成28年度の研究実績】 約1,300ヵ所での一斉点検成果資料を基に、ため池調査対象候補を13ヵ所に絞り、現地を調査した結果、6ヵ所のため池(次郎兵衛・大堤・根五郎沢・なしろ沢・小館堤・滝沢堤ため池)を検証対象とした。一面せん断試験に用いる不攪乱試料採取においては、エンジン式ドリルオーガーと刃先付ハンドオーガーを組み合わせた採取方法を試み、それぞれ堤体材料物性の異なる6ヵ所のため池堤体で実施した結果、効率的な不攪乱試料採取が可能であることを確認した。また、それらの採取孔を利用したベーンコーンせん断試験も容易に実施することが出来た。3種類の試験方法(一面せん断試験・ベーンコーンせん断試験・スウェーデン式サウンディング試験)結果による地盤強度特性を比較・検討した結果、地盤物性値φに着目すれば、一面せん断試験、スウェーデン式サウンディング試験、ベーンコーンせん断試験の順に大きくなった。また、粒度試験結果からスウェーデン式サウンディング試験による土性判定とは異なる場合も見受けられた。更に、ベーンコーンせん断試験と一面せん断試験結果から、両者の相関性を見出す可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、想定していた調査ヵ所以上のため池堤体を調査(6ヵ所)することができ、効率的な不攪乱試料採取方法の確立や、ベーンコーンせん断試験の実施の可能性も確認することができた。そのため、来年度以降の調査がスムーズに実施することが可能となり、更なる調査ヵ所でのデータ蓄積が容易に行える事となり、研究は順調に進んでいる。 また、実際の現場試験作業状況から、ベーンコーンせん断試験機や一面せん断試験機自体の改良も行った。特に、採取試料の乱れが確認される場合、標準的な直径6cmの一面せん断試験試料の他に、直径4.5cmの試料でも対応可能なように試験機器の調整もはかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に引き続き、更なる調査ヵ所でのため池堤体でのデータ蓄積を実施し、次年度以降に行うため池堤体の構造的安定性評価の準備を行う。また、ベーンコーンせん断試験と一面せん断試験結果による両者の相関性を、より多角的な観点から詳細に分析し、簡易な現場せん断試験手法の確立と信頼性を目指す。
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Causes of Carryover |
計画通り執行した結果である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度の執行計画に利用する。
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