2018 Fiscal Year Research-status Report
堆砂による路床の時空間変動の予測を基礎とした魚巣・魚溜工の設計支援手法
Project/Area Number |
16K07935
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
前田 滋哉 茨城大学, 農学部, 准教授 (00346074)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 生態環境 / 堆砂 / 数値計算 / 水理 / 農業水路 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国では農業農村整備事業において,農業用排水路の魚類を保全する試みがなされつつある.対象魚にとって好ましい生育・生息場を保全するには,水域のネットワークの維持,適切な水管理が必要とされる.局地的には,魚巣,魚溜などの環境配慮工が導入されている.しかし,環境配慮工の周辺は流れが緩やかになる傾向があるために堆砂が生じ,その有効性が阻害されるケースが報告されている. 本研究の目的は,農業用排水路のような小規模水域の魚類生息場保全の観点から,流れ・流砂・路床変動の数値計算によって,より有効な魚巣や魚溜を設計するために必要な手法を開発することである.環境配慮施設の生息場としての価値を評価するとともに,長期的に堆砂が生じにくく,それらが管理しやすいものとなるよう,生態水理学,土砂水理学の観点から調査,分析する. 当該年度では,前年度に引き続き,対象としている排水路の魚巣・魚溜設置区間において,水理観測,路床標高の空間分布調査を,灌漑期・非灌漑期に実施した.また,対象区間上流部において,水位,水温,濁度を10分間隔で自動観測する遠隔通報システムの運用を継続した.加えて,田植え前後の路床標高の変化を詳細に調べるため,路床標高の調査と流れ・路床変動の数値シミュレーションを試みた.その結果,11月から翌年4月中旬まで魚巣内に堆積していた土砂や落葉は5月上旬にほとんど流下することがわかった.また,2016年から3年分の半年ごとの魚巣,魚溜,対象区間全体の堆砂・洗掘量を整理したところ,水路区間では堆砂量が漸増する傾向が見られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
排水路の路床変動データや水位,流量,濁度の時系列データの蓄積により,環境配慮工における堆砂や洗掘の実態把握が順調に進んだ.また,路床変動については,均一粒径,混合粒径,粒度分布の仮定など多様な場合を想定した数値計算を行った結果,改良が必要な点が明確になりつつあるため.
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Strategy for Future Research Activity |
路床標高分布の実測,水理観測を継続する.これまでに得られたデータを整理し,対象地の堆砂・洗掘発生要因の明確化を進める.また,魚巣・魚溜の規模がシールズ数の数値計算結果に与える影響を分析し,環境配慮工の設計を支援する方法について研究する.
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Causes of Carryover |
現在,茨城大学で行われている学部のカリキュラムや入試等の変更に関する業務が想定以上に多く,当初計画していただけの研究時間を確保できなかった.また,2017年に機器が落雷にあい故障し,その後修繕したものの,データ観測を一時中断していたことなどが理由である. 路床変動の予測に必要な水理情報がいまだ不十分なので,そのデータ収集の継続に使用する.また,成果発表に関する旅費や掲載料などにも使用する予定である.
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