2017 Fiscal Year Research-status Report
産物書上帳と地租改正絵図を用いた江戸期の栃木県農村部における生物多様性の解明
Project/Area Number |
16K07937
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
守山 拓弥 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70640126)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿野 亘 北里大学, 獣医学部, 講師 (10623936)
田村 孝浩 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20341729)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地租改正絵図 / 産物書上帳 / 聞取り調査 / 魚類 / 両生類 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、里地里山の生物多様性の重要性が指摘されおり、その保全や再生の際には、目標や評価基準となる「良好に維持された状態」を明らかにする必要がある。こうした「良好に維持された状態」の里地里山とは、一般に循環型社会が成立した江戸期以降かつエネルギー革命が起きる1950年代頃までの期間と捉えられる。本研究では、「良好に維持された状態」の里地里山の生物多様性として、江戸期の生物多様性を明らかにすることを目指す。この目的を達成するために、本研究では、江戸期(享保年間)の史料「産物書上帳」と、新たに発見した明治初期の史料「地租改正絵図」という2つの歴史史料を用いるという独創的な方法を用いる。 1)産物書上帳に記された生物名と分類学的な生物種との対応関係を明らかにする:H29年度に栃木県内で実施した聞き取り調査およびアンケート調査により、魚類、両生類および水生昆虫類の生物相リストを作成した。一方で、植物については、現在リストを作成中である。特にこのアンケート調査は、栃木県内の235集落の情報を集積することができ、本研究で活用する生物相のリストとしての価値に加え、各集落における昭和30年代頃の生物相の分布情報および地方名やその活用方法といった生物文化多様性につながる基礎情報の集積が行えた。 2)地租改正絵図を基に明治初期の土地利用を明らかにする:宇都宮市内の一部地域において「地租改正絵図」を写真撮影し、GISソフト(ArcGIS)上での読み込みを行った。今後、「地租改正絵図」に書かれた地図情報をポリゴン化する。 3)江戸期の生物相と明治期の土地利用から江戸期の生物多様性を明らかにする:1)および2)の進捗を踏まえ、H30年度中に実施予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)産物書上帳に記された生物名と分類学的な生物種との対応関係を明らかにする について、複数の生物分類群での情報を集積している。一方で、当初予定していた植物、哺乳類、鳥類について、地方名に詳しい地域住民おらず情報の集積が進んでいない点が当初予期していなかった状況である。 2)地租改正絵図を基に明治初期の土地利用を明らかにする 宇都宮市内の一部地域において「地租改正絵図」を写真撮影し、GISソフト(ArcGIS)上での読み込みを行った。当初予定では、H29年度中に「地租改正絵図」に書かれた地図情報をポリゴン化する予定であったものの、写真撮影の手法検討に時間を要し、ポリゴン化作業がH30年度に実施することとなった。 3)江戸期の生物相と明治期の土地利用から江戸期の生物多様性を明らかにする 当初予定どおりH30年度に実施予定。
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Strategy for Future Research Activity |
1)産物書上帳に記された生物名と分類学的な生物種との対応関係を明らかにする 現在、栃木県内の複数集落の地域住民に聞き取り調査のアポイントをとった状況であり、可能な範囲で生物種の地方名と生息状況を集積する予定である。 2)地租改正絵図を基に明治初期の土地利用を明らかにする 写真撮影した情報をポリゴン化し、数値情報とする。 3)江戸期の生物相と明治期の土地利用から江戸期の生物多様性を明らかにする 当初予定どおりH30年度に実施予定。
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Causes of Carryover |
対象生物の地方名の集積および地租改正絵図のポリゴン化について進捗が当初計画より遅れたことにより、次年度使用額に差が生じた。この差額について、H29年度に計画していた作業をH30年度に実施することにより使用することを計画している。
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