2017 Fiscal Year Research-status Report
異常輸送現象を伴う溶質輸送シミュレータと地下水硝酸リスクマップの開発・検証
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16K07941
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
井上 一哉 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (00362765)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 異常輸送 / 硝酸性窒素 / マクロ分散 / 不均質性 / 相関長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,昨年度に製作した2mの移流規模を実現可能な溶質輸送実験装置を用いて,不均質地盤内を移動する水溶性物質の輸送挙動について定量的に考究した.硝酸性窒素の地下空間移動,ならびに,フィールド状態を反映できる透水係数分布の不均質性を念頭に置いて,透水係数分布の自己相関性をターゲットの1つに設定した.実験装置内に,一辺3㎝のブロック状で透水係数を担う土質試料を充填し,マトリクス状に1440個の配置することで,実空間を確率統計的にラボレベルで再現した.光量の点で既存の画像解析技術の精度を向上させるとともに,空間モーメント法を利用して,色素水溶液の空間変動に基づいて,成層地盤における溶質のマクロ分散長の空間変動,ならびに,選択輸送となる輸送経路の同意定を可能とするシステムを構築した.その結果,相関性の増加に応じたマクロ分散性の増加を捉えることができた.また,相関性の低い場では,低透水領域から高透水領域までの距離が短い一方で,相関長が高い場ほど低透水領域から高透水領域までの移行距離も長くなり,溶質が拡大しやすいことがわかった. 他方,数値解析的アプローチの発展を目指して,また,フィールドにおける水質管理や水利用計画に資するべく,トレーサ試験を模擬した移流分散解析を実施した.ダイポール試験や自然勾配試験など,原位置トレーサ試験を反映できるモデルを構成するとともに,時間モーメントを用いた透水係数推定を実施した.その結果,各試験方法に対する孔間距離と推定精度の関係を示すことができた.また,自然動水勾配試験では複数点で試験することで領域全体の透水係数分布を概ね推定できる結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
輸送距離が2mとなる規模の溶質輸送実験は世界的に例が少ない.予備実験を経て,本実験を繰り返し良好に実施できており,実験データの精度についても,分散現象の定量化手法を段階的に改善できており,安定したデータ取得を可能としている.相関長に着目した類似のラボ実験は希少であることから,研究成果をとりまとめている最中である.さらには,数値解析手法により原位置トレーサ試験を反映した透水係数分布の推定を良好に達成できていることに加えて,異常輸送を伴ったランダムウォーク粒子追跡法の新たな応用面を見出すことができている.したがって,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
地下水汚染物質の異常輸送性を実験的に把握・定量化することに加えて,従来にない溶質輸送解析を構築する.フィールドでの適用性も想定して,揚水状況を考慮した実フィールド規模の数値解析を実施する.特に,ラボ実験と連動することによって,不均質透水場を移行する溶質の分布形態を定量するとともに,揚水井での物質回収状態と所要時間の関係について考究する.さらには,硝酸性窒素の移行シミュレータによって,硝酸の時間・空間分布に応じたリスクマップとの提示を目指す.
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