2017 Fiscal Year Research-status Report
衛星画像データから水田域の水生生物の生息場を評価する手法の開発
Project/Area Number |
16K07949
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
渡部 恵司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 主任研究員 (50527017)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カエル / 生物多様性 / 環境保全型農業 / リモートセンシング / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、衛星画像データから算出する「湛水指数」を用いた水田域における水生生物の生息環境の評価手法の開発に向けて、5つの研究項目(項目1:湛水指数の推定精度の検討、項目2:カエル類の越冬場や産卵場の特性把握、項目3:カエル類等の生息分布調査、項目4:湛水指数と生物の生息分布の関連解析、項目5:とりまとめ)に取り組んでいる。このうち、29年度は、項目2、3を実施した。 項目2では、トウキョウダルマガエルを屋外実験施設で飼育し、この様子をタイムラプス撮影することにより越冬期の行動を把握した。28~29年度の結果を解析すると、カエル個体の土中への出入りのパターンは大まかに期間1~5に分類された。期間1(10~11月)では気温が高い時に、期間2(12月)および4(4月)では降雨時に地上にいる個体が多かった。一方、期間5では気温・降雨にかかわらず、概して夜間に地上に出て、日中は地中に潜る行動を繰り返した。なお、期間3(1~3月)では、すべての個体が土中に潜っていた。また、期間1、4および5では日中よりも夜間の方が地上にいる個体が多かった。期間2~4(12~4月)の日中には、ほとんどの個体が地中に潜っているため、耕耘を避けることが越冬個体への影響の軽減につながると推察された。 項目3では、カエル3種の生息分布を茨城水戸市・茨城町・つくば市、栃木県市貝町の各調査水田において調べた。ニホンアカガエルは4~5月の卵塊の数により、トウキョウダルマガエルとシュレーゲルアオガエルについては5~6月の鳴き声の聞き取りにより、分布を記録した。また、水生昆虫類の生物への適用可能性を検討するため、石川県小松市の冬期湛水田において、3月にすくい取り調査により水生コウチュウ類やユスリカ等の個体数を把握するとともに、冬期湛水田の分布を把握した。これらの分布データと湛水指数との関連を、項目4において解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、項目2および項目3を実施するとともに、後述の項目4に関する立地環境データの収集・整理を茨城県・石川県について開始した。このため、全体を通して概ね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、項目4(湛水指数と生息分布の関連解析)および項目5(とりまとめ)に取り組む。項目4では、項目1と項目3で得られたデータに補足的な現地調査データを加えながら、一般化線形モデル等を用いて湛水指数とカエル類、水生昆虫類等の各生物種の生息量との関連を解析する。衛星画像データは、項目2の結果をもとに、カエル類に影響が大きい期間に撮影されたものを解析に用いる。特にカエル類の生息には標高や周辺の土地利用等の立地環境も影響することから、解析ではこれらの因子も説明変数に加える。また、研究代表者が過去に実施したカエル類の分布調査データについても同様の解析を行い、調査当時の湛水指数が生息環境の評価に利用できるかどうか検討する。 項目5では、項目1~4に基づいて、研究全体をとりまとめる。 研究協力者として、農研機構 農村工学研究部門の小出水規行氏・瑞慶村知佳氏に、現地調査や解析の協力、助言を得て、効率的に研究を進め、国際水田・水環境学会や農業農村工学会等において成果を発表する。
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Causes of Carryover |
理 由 : 課題担当者のみで現地調査を行ったため旅費を軽減できたことや、解析補助者の人件費を軽減できたことから、次年度使用額が生じた。
使用計画 : 平成30年度は、項目4(湛水指数と生息分布の関連解析)に関連する調査、解析を行うため、必要な旅費や観測機器・データ解析用ソフトウェア等の物品費を支出する。次年度使用額については、追加的な現地調査を行うための旅費や、データ解析補助のための人件費に充てる予定である。
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