2016 Fiscal Year Research-status Report
鶏ふん灰酸溶解液を堆肥化排気脱臭に用いた高肥効肥料としてのリン回収
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16K07954
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
前田 武己 岩手大学, 農学部, 准教授 (40333760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立石 貴浩 岩手大学, 農学部, 准教授 (00359499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鶏ふん灰 / 酸溶解 / 堆肥化 / 脱臭装置 / リン回収 / アンモニア吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,鶏ふん灰を酸に溶解させて薬液として脱臭装置に用いることにより,灰に含まれるリンと堆肥からの揮散アンモニアを結合させた化学肥料と同様の利用が可能なリン酸塩を,効率的に回収する手法を明らかにすることを目的としている。 平成28年度は研究初年度として,脱臭液としての利用を目的とした鶏ふん灰の酸溶解液の調整方法についての検討を行った。検討は,供試酸として塩酸と硫酸の2種類の酸を用いて,酸の濃度と酸と鶏ふん灰との量的比率(L/S比)とに着目して進めた。酸溶解液の調整条件の評価は,溶解液の回収率,pH,各成分の溶出率,アンモニア吸着能を指標として行い,同時に回収したリン酸塩と液中に残存した成分の分析を行うことにより,リンなどの各元素の回収率を求めた。 酸溶解液の回収率は,硫酸溶解が塩酸溶解よりも低かった。硫酸での溶解では石膏(硫酸カルシウム)が生じるために,濾過時に未回収溶解液が多くなるためである。全体的に酸濃度が高くL/S比が高い条件ほど各元素の回収率は高くなるが,溶解液のpHがおおむね4.0以下であれば,リンの溶解率は100 %に近い値となった。アンモニア吸着能には酸種による明確な違いはないが,その際に得られる沈殿1としてのリンの回収率は,硫酸溶解では70 %未満であるのに対し,塩酸溶解では多くの条件で100 %となった。硫酸溶解吸着液から得られた沈殿は窒素を含むことから,沈殿にはリンとマグネシウムとアンモニウムを等モルずつ含むリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が多く含まれていたと推測される。一方の塩酸溶解では,吸着液に多量のカルシウムが含まれていたことと,沈殿に含まれる窒素が少量であったことから,リン酸二水素カルシウムが多く生成されたと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は研究初年度として,脱臭液としての利用を目的とした鶏ふん灰の酸溶解の調整方法について検討を行い,供試酸として塩酸と硫酸の2種類の酸を用いて,酸の濃度と酸と鶏ふん灰との量的比率(L/S比)とに着目して研究を進めた結果,脱臭装置の吸着液として用いる酸溶解液の調整条件について,操作性,酸濃度とL/S比,得られる沈殿の性質などの観点から多くのデータが集積された。また,供試酸として塩酸と硫酸を用いたことにより,得られる酸溶解液をアンモニア吸着液として用いたときの違いについても明らかにすることができた。 供試酸として塩酸を用いたときには溶解時の濾過が容易ではあるが,溶解液中にカルシウムが多く存在するためアンモニア吸着液として用いたときには,アンモニアによる吸着液のpH上昇により生成される沈殿は,リン酸カルシウムを主とするものと考えられる。一方,硫酸を用いたときには,予備研究において示唆されていたように硫酸とカルシウムとが反応し不溶性の硫酸カルシウム(石膏)が生じるために,濾過の効率が著しく低下することが明らかとなった。しかしながら,硫酸による酸溶解液をアンモニア吸着液として用いたときには,カルシウムの溶解が少ないためにマグネシウムも沈殿生成に用いられて,リン酸カルシウムとリン酸アンモニウムマグネシウムの混合物が沈殿として回収された。 以上の結果から,塩酸溶解と硫酸溶解のそれぞれで得られる酸溶解液をアンモニア吸着液として用いるときの特徴が明らかになったことから,現在は脱臭装置に用いる酸溶解液の選定と,その方法について検討を行っている。よって,平成28年度の進捗状況としては「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の2点が重要な検討課題である。先ず,酸溶解液の堆肥化排気の脱臭装置への利用方法についての検討である。脱臭液については,アンモニア吸着液としては酸性であることが,リン酸塩沈殿を得るためにはアルカリ性であることがそれぞれ要求される。このため,酸溶解液を用いた脱臭槽を直列に複数設置し,堆肥化排気を順次通過させる方法の採用が妥当と考えられるが,堆肥化の排気は常時脱臭することを求められるために,複数設置された脱臭槽の運用方法が,重要な検討点となる。具体的には,アルカリ性により沈殿生成を主な目的とする脱臭槽,酸性によりアンモニア吸着を主目的とする脱臭槽,沈殿を回収して新たな脱臭液を補充する予備の脱臭槽の3槽を,どのように運用するかについて検討を行う。また,前項において述べたように塩酸溶解の酸溶解液は調整時の濾過操作が容易ではあるが,カルシウムの溶解が多いために沈殿はアンモニアを含まないリン酸カルシウムとなる。このため,マグネシウムを添加することにより,リン酸アンモニウムマグネシウムも含む沈殿となるかについての検討も行う。 次いで,沈殿の肥料としての利用効果の検討に着手する,これは堆肥化装置への利用とは別に,平成28年度に行った実験を単純にスケールアップして必要量の沈殿を得て,成分・組成分析の後に,植物栽培試験を行う。栽培条件については今後検討を行うが,沈殿単体や,N,P,K,Ca,Mgバランスを考慮して不足分を加えた試験,堆肥との同時施用などの試験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度の実験に用いた消耗品の一部は,研究室に在庫していたものを使用したため,一部の未使用金額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究にて使用する消耗品費の購入に利用する。
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