2016 Fiscal Year Research-status Report
イチゴの物性・光学的特性・生物的特性に基づく超高品質包装流通技術の創出
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16K07957
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
柏嵜 勝 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (00282385)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イチゴ / 高品質化 / 流通技術 / 品質評価 / 物理的損傷 / 損傷関連遺伝子群 / 非破壊評価技術 / 高品質輸出輸送技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
【課題1】イチゴの表層組織の粘弾性や摩擦特性などの物理的特性を把握するために、イチゴ果実数百個を供試し、圧縮引張試験機を用いてイチゴ果実表皮に垂直にφ2mmプランジャー貫入させ、果皮及び果実表層組織の破壊初期における物理的性質を把握した。イチゴ果実(品種:栃木i27号)100%着色果の弾性限界は、歪1%程度で応力0.4N/mm2程度であったが、データのばらつきが大きく、測定方法の改善が必要である。イチゴ果実各部分の弾性係数は、着色状態に関わらず果頂部が低く、赤道部の約1/3程度であり、萼片部分が最も高かった。また、果実表面の摩擦係数に関しては、果実固定方法など、測定方法の改善が必要であった。 【課題2】本研究担当者が開発したイチゴ容器及び輸送資材を用いてベルギー輸出試験を実施し、外観品質及び食味の変化を把握した。また、現地で販売されているイチゴを数種類入手し、同様に品質評価を行った。輸出試験の結果、外観品質及び食味の劣化は殆ど見られなかった。現地で流通しているイチゴは、甘味のばらつきが非常に大きく、食味官能評価は非常に低い結果であった。また、現地にて食味の第三者認証の結果、非常に高い評価を得た。 【課題3】イチゴの物理的損傷について、外力一定及び変形量一定の二つの観点から、生じた物理的損傷部位の分光特性及びスペクトルイメージング特性を継続的に把握し、データの蓄積を進めた。また、損傷検知システムを試作し、イチゴ果実1個約10秒での処理を可能にした。 【課題4】イチゴ果実に生じさせた物理的損傷によって発現量に変化が見られた遺伝子を27種類までスクリーニングした。この内特徴的な変化を見せた2種類についてさらに詳細に検討を進め、果実表面に変形量約1mmを生じさせる程度の軽微な損傷であっても、短時間でダイナミックに変化する遺伝子を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題1:国産イチゴ果実の高品質世界展開技術に資する、イチゴ表層組織の物理的性質の把握を順調に進めている。摩擦特性の把握については、測定中のイチゴ自体の変形を加味する必要が生じ、測定方法の検討が必要と判断したが、本研究の成果によって表層組織の力学的堅牢性が担保できる部分が把握できたため、具体的な対策を講じることが可能である。 課題2:本研究代表者の研究成果を有効に用い、国産完熟イチゴ輸出試験を実施し、外観品質及び内部品質とも非常に高い品質保持効果が確認できた。また、海外における食味の第三者評価にチャレンジし、EU圏(ベルギー)に於いて過去に類を見ない程の非常に高い評価を得ることができた。よって、本研究方針が日本産完熟イチゴの世界展開技術の創出につながる研究成果を生み出す可能性が確認できた。 課題3:スペクトルイメージング技術を用い、イチゴの物理的損傷部位の可視化システムを試作し、イチゴ果実の果底部を除く全表面の物理的損傷を可視化と物理的損傷部位の特定を1果実当たり約10秒で可能にした。さらに、イチゴ表面反射スペクトルと糖度及び内容成分との関係性を精査し、物理的損傷の測定度同時に糖度分布の推定が可能であることを明らかにした。 課題4:イチゴ果実に生じさせた物理的損傷によって発現量に変化が見られた遺伝子を27種類までスクリーニングし、さらに果実表面に変形量約1mm程度の軽微な損傷であっても、短時間でダイナミックに変化する2つの遺伝子を確認できた。 総合的自己評価:全ての課題について、初年度研究計画で想定した研究成果を超える成果が得られた。特に、日本産完熟イチゴの食味に関して海外第三者認証機関による高い評価を獲得できた点は、予想外の成果と判断している。また、本研究方針が海外における日本産完熟イチゴの高い評価につながる可能性を明らかにできた。よって、本研究初年度の進捗評価を判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1:イチゴ果実の輸送品質に関連する物理的性質、すなわち果実表層組織の破壊初期における物理的性質、粘弾性、摩擦係数などの把握を継続する。摩擦係数の測定方法についてはH28研究結果を踏まえ具体的な改善策を講じる。特に、イチゴ果実自体の固定方法が重要であり、果実表層組織が最も堅牢である果底部及び果柄で固定し、果実赤道部で補助的に支持するイチゴ果実固定治具の試作を進める。そして、イチゴ果実の物理的特性の経時的変化や品種による差異について把握する。 課題2:イチゴ輸出試験を実施し、品質の変化を把握するとともに、輸出先国の第三者味覚評価を実施する。また、イチゴの流通に使用されている包装資材を入手し、その物理的性質を把握し、流通品質要因についてイチゴ表皮系組織との関係性を品質評価要因の観点から把握する。 課題3:イチゴの表皮系組織の分光特性を継続的に把握し、物理的損傷部位の分光特性及びスペクトルイメージング特性の把握を継続し、特に貯蔵中における分光特性の経時的変化を把握し、品質的観点及び生物的観点から考察する。さらに、イチゴの全面反射光のスペクトル特性と果実硬度の関係を把握するとともに、蓄積したイチゴ表皮系組織の分光特性を用いて物理的損傷の発生難易推定方法の開発に取り組む。 課題4:イチゴの損傷を局所レベルで解析し、さらに遺伝子のスクリーニングを継続する。絞り込まれた遺伝子について、特に細胞壁多糖類関連酵素との関連性を検討し、物理的損傷の発生メカニズムについて考察する。 総合検討:H29年度末より全ての課題の研究成果を総合的に検討し、イチゴの物性・光学的特性・生物的特性に基づく新規な高品質包装技術・超高品質流通技術の創出に向けて具体的検討を進める。
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