2017 Fiscal Year Research-status Report
植物の再帰的夜間冷却機構を考慮したGPS支援型広植生域最低気温予測システムの構築
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16K07958
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
森 牧人 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (60325496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安武 大輔 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90516113)
西村 安代 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (20435134)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 夜間冷却 / 日最低気温 / 耐凍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,研究代表者と研究分担者が中心となり,前年度から開発してきた「植物の再帰的冷却を考慮したGPS 支援型広植生域最低気温予測システムRPSDMTPRC(Regional Prediction System for Daily Minimum Temperature with Plant Recursive Cooling)の開発を継続した.具体的には,まず,基準温度T_STDの同定を経て,前年度に提案された植物の再帰的冷却に関する仮説が検証された.次に,低温被害危険度指数RILTD(Risk Index for Lower Temperature Damage)について検討・作成され,包括的データ解析を経て,植生毎・地域毎に指数が整備された後,データベース化が行われた.GPS-気象観測網の環境データ取得・資料収集は前年度から継続され,上記の一連の作業の成果がRPSDMTの開発に活かされた. 現地における生体量調査では,植物葉がサンプリングされ,フリーザーを用いた室内実験形式で植物体の氷核形成温度が測定・評価された.併せて,冷気の生成量の定量的に評価に資するための,葉の低温ストレスに対する耐性(耐凍性)について調べられた.その結果,葉からの電解質漏出率(EL)の温度依存性に特徴的な傾向が得られた.すなわち,ELの温度低下に伴う増加率が4月中旬においてはほぼ一定値をとり,それを境に寒候期(1月~3月)のELは小さく,低温域で増加するのに対し,暖候期(5月~10月)のELは相対的に大きく,高温域で増加した.遅霜害の発生しうる4月中旬に認められた両期のEL値間の大きな隔たりより,春先の約1ヵ月間の短期間で耐凍性が喪失した結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
農地や森林等の植生地における日最低気温は,植物の生長を規定する重要な環境因子である.地球温暖化の顕在化しつつある現在,多年生植物が秋季の低温不足に起因して翌春の開花に支障をきたす一方で,気温上昇に伴う植物の耐凍性の喪失により,遅霜害や凍害は逆に増える傾向にある.このような背景のもと,初年度より2カ年かけて開発してきた「植物の再帰的冷却を考慮したGPS 支援型広植生域最低気温予測システムRPSDMTPRC(Regional Prediction System for Daily Minimum Temperature with Plant Recursive Cooling)の開発を進めているが,(1)基準温度T_STDの同定に不確定要素があること,(2)植物の再帰的冷却に関する仮説の検証が完全ではない部分があることが,若干の課題点として残っており,それにより研究がやや遅れているといえる.ただし,その反面,当初有用と想定していた,研究解析指標である植物葉の氷核形成温度に加え,電界質量出率や乾物率が植物葉の耐凍性や冷却過程を考慮する上でその有用性が想定外的に見いだされたのは収穫であったといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成30年度)は前2ヶ年間に得られた結果に基づき,開発を行ってきた広域日最低気温予測システムを完成させる.最終的には,四国全域を対象に高い解像度(1kmメッシュ)で日々の日最低気温を予測する.これに,低温被害危険指数をメッシュごとに計算・付加し,「危険度評価付日最低気温の広域予測」を実現し,予測技術の確立を図る.これらのの成果を基に,対象域内での低温の常襲地帯などを定量的に抽出することにより,それに起因した気象災害(霜害・凍害)の局地性についても明らかにし,域内の農業管理の一助とすべく,行政体や地域住民への提言を通して積極的に情報発信も行う予定である.
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Causes of Carryover |
初年度より2カ年かけて開発してきた「植物の再帰的冷却を考慮したGPS 支援型広植生域最低気温予測システムの開発に際し,モデル内の基準温度の設定に不確定要素がありその同定に時間を要し,さらに,植物の再帰的冷却に関する仮説の検証が完全ではなく研究に遅れが生じた.最終年度は,以上の点を修正・克服するために次年度使用金額を使用するとともに,最終年度は,年度経費を効果的に用い,現地観測の継続と上記システムの最終完成および研究成果公表を計画している.
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Research Products
(4 results)