2016 Fiscal Year Research-status Report
水源と農地が連携した農業用水利システムにおける自律型小水力発電システムの開発
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16K07965
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中矢 哲郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門 水利工学研究領域, 上級研究員 (60414447)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水制 / 開水路流れ / 垂直軸水車 / 揚力型水車 / 小水力発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
水源から農地にいたる開水路管水路複合系の農業用水利システムにおいて、未利用として残されている開水路の流水エネルギーに着目し、水利施設群における小水力発電の適用箇所の現地調査を行った。その結果、支線開水路の取水口前面の堰上げ施設を制御することにより、上下流の圧力差と高流速部分を小水力エネルギーとして利用できることがわかった。 そこで、水路内における堰上げ領域の自動制御が可能な可動式水制を開発し、堰上げによる圧力差の制御と最大流速の制御を可能とした。この堰上げ領域直下の高流速域に垂直軸水車を設置することで流速エネルギーと圧力エネルギーの両方を効率的に利用できる装置を考案した。 実スケールにほぼ近い規模の水路幅0.9m、長さ12mの回流水路を用いた水理模型実験より、可動式水制周辺の水理特性、水車の出力特性、発電効率、を検討した。水車は4枚ブレードの垂直軸揚力型水車であるダリウス水車を作成した。その結果、水制幅が大きいほど堰上げ効果が大きくなり、その直下で水位が低下し、大きな圧力差が得られ、水制なしの場合には低出力で発電不可であった0.8m/s以下の低流速領域でも、発電できるようになることを示した。これらの結果は、農業用水として取水するために必要な堰上げ高を保ちつつ、その落差を利用して発電を行う、利水と発電が調和した発電手法として意義があることを示す。また可動式であるため、水路のメンテナンス時は水制幅を狭め、取水時には再度開くという制御も容易であることから実用性が高い面で重要である。 開水路の水制周辺の渦の発生などの乱れや、水制前後の圧力差を再現するために平面2次元乱流モデルであるSDS-2DHモデルによる解析モデルを作成した。本モデルの作成により現地の水制の設置幅や水車設置位置が発電効率に与える影響を把握できるため、現地への導入を図る際に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
水位等の流れの状態や発電状況の監視とデータ収集、分析、遠隔制御機能等を有するSCADAによる水・エネルギー管理システムに関しては、本年度は着手にいたらなかったため。本課題の部分は次年度に開発予定の管水路を対象とした水・エネルギー管理システム作成時に導入する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、管水路系のパイプライン内の流量・圧力状態から、バルブの制御により発電利用可能なエネルギーを探索することが可能な、一次元非定常流れ解析モデルを作成する。 その上で、流量、圧力のモニタリングをしながらバルブの自律制御により、発電用水を創出するパイプライン導水型の小水力発電システムを開発し、水理模型実験により出力特性、実用性,設置の簡易性を明らかにする。発電部分の水車にはバケット数や水車径を変えることが可能な衝動型水車を用いる。これらの、管水路系を対象とした自律制御による発電用水の創出と発電水車を対象としたSCADAによる水・エネルギー管理システムを作成する。本システムには平成28年度に開発した開水路を対象とした発電水車装置も追加導入することで、平成28年度で遅れていた研究進捗部分を補完する。最終年においては流水エネルギー利用、および管水路導水型の自律制御による小水力発電が可能な水・エネルギー管理システムに、既存の水管理システムからの情報と接続し、農業水利システム全体における余剰エネルギーを抽出する機能を追加する。
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Causes of Carryover |
予定していたPLC/SCADAによる水・エネルギー管理システムの開発の着手が遅れたため、その分の経費の未使用分が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては管水路を対象としたPLC/SCADAによる水・エネルギー管理システムを開発するために、この課題の中に、本年度予定していた開水路を対象としたシステムを追加導入を行うために生ずる経費に使用する。
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Research Products
(1 results)