2016 Fiscal Year Research-status Report
近赤外分光法による非金属・生物系異物検出法に関する研究
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16K07972
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
河野 俊夫 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (60224812)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 異物検出 / 非金属異物 / 生物系異物 / 近赤外 / 検出法 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属異物については、すでにX線による検出方法がほぼ確立しているが、X線は非金属異物や生物系異物に対しては無力であり、新しい検出方法が求められている。そこで本研究では、混入先の食品が水分を含むことを考慮して、その検出に近赤外域の光を利用することとした。社会的に各種メディアで報道される混入事故事例を参考に、非金属異物、生物系異物数種を選んでサンプリングし、その近赤外スペクトルを測定した。混入先の異物には事故事例の多い肉加工製品を対象として同様にスペクトルを測定した。測定波長は833nmから2,500nmの範囲とし、シャーレ上においた測定対象物を、近赤外分光用の専用反射板で挟み込み、シャーレ側から照射したハロゲン光に対する、測定対象物背面からの拡散反射光をスペクトル分析した。得られるスペクトルは1本が8,300点の波長で構成されるため、異物ごとの特徴を比較抽出するには情報が多く、一目では特徴が明らかにはならない。そこで、PCA法(主成分分析法)と呼ばれる情報集約手法を用いて、各異物の空間集合点を少ない軸で要約した。異物の空間集合点のばらつき(分散)をもっとも反映する、主成分第一軸、およびその次に反映する第二軸とで構成する、主成分第1軸-第2軸平面に各異物の空間点の射影を行った。その結果、異物の主成分第1軸および第2軸に対する成分(主成分)は、どれも小さな値をとり、特徴となる波長が多数に分散していることがわかった。また、このPCA空間上に分布する異物の集合点に対して、直線で異物を判別する分析(PLS-DA、部分最小自乗法による判別分析)を試行してみた。結果として、直線のみでは各異物を明瞭には判別することが難しいことが分かった。そこで、最後に各異物の第一主成分に寄与する割合の高い波長を抽出し、次年度の基礎データとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非金属異物、生物系異物それぞれについて、混入事例のあるものを中心として数種類ずつのサンプルを採取し、InGaAs型高感度検出ユニット付きFT-NIRを用いて、その近赤外スペクトルを測定した。非金属異物としては、ビニール、ポリエチレン、衣服片、プラスチック片、生物系異物としては黒ゴキブリ、ハエ、ブヨ、ダンゴムシ、毛髪など、食品工場の環境で遭遇する可能性の高いものを選んだ。測定波長は833nm~2,500nmの範囲とし、2~5mm程度の厚さの異物切片をシャーレに入れ、その上から近赤外分光計付属の標準反射板を載せて、拡散反射モードで測定した。また、混入先食品としては事故事例の多い肉加工製品(例えばハンバーグなど)について同様の近赤外反射スペクトルを計測した。得られたスペクトルは、1本につき8,300波長点で構成される。このため、異物および混入先食品それぞれのスペクトル空間での特徴を集約するPCA法(主成分分析法)を用いて第1主成分-第2主成分平面への射影プロットを行った。PCA解析の際のアルゴリズムはSVD法(特異値分解法)で、バリデーションはフルバリデーション、最大主成分数は7までとした。PCA解析の結果、異物の第1主成分軸、第2主成分軸のスコアは小さく、異物はそれぞれ、多数のスペクトル波長点に亘り、特徴点が分散することが分かった。また、この段階でPLS-DA(部分最小自乗法による判別分析)を試みた。その結果、PCA空間上で判別直線を作るPLS-DA法では、各異物間の集合点を明瞭には判別し得ないことが判明した。そこで、各異物の第一主成分に寄与する割合の高い波長を抽出した。これは、次年度以降計画する非線形判別モデルのための基礎データとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度測定した異物のうち、生物系異物(虫類)は夏が採取のメイン時期となる。生物系異物は、一般の非金属異物とは異なり、自由に任意の数だけ採取することは難しく、捕獲した状況に依存する。異物の種類をスペクトル解析で分類同定するためには、一定数の試料確保が必要であるが、今年度の測定に用いた生物系異物は限られていた。そこで次年度においても採取時期に集中的に生物系異物の採取に努める。また、非金属異物についても同様に多様な材質のものを試料採取し、その近赤外スペクトル・データの集積を行う。集積データの多様性とデータ数により、PCA分析の際に異物の特徴点が特定し易くなる。今年度後半には、異物を実際に混入させた食品、つまり、(食品+異物)の近赤外スキャンニングを行っているが、現在のところ、装置の構造的な制約により、受光角度は正反射に近い状態での測定となっている。そこで、次年度は反射角度を可変できる治具などを検討して、受光角度を変えながらの近赤外反射測定を試みる。現在は、据え置き型のFT-NIRの装置を用いて測定しているため角度変更が困難である。そこで次年度は、別途、光照射側と分光側とが分離したシステムで、この測定を検討する。ただし、分光器が異なることや、測定範囲が900nm~1,600nmに制約されるため、一部の試料について据え置き型とのデータ比較を行い、必要に応じて変換処理を行う予定である。また、近赤外データをもとに、混入した異物を推定するためのモデルについても検討する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、分光器と光源が分離した、波長800nm~2,500nmの測定範囲を有するFT-NIR装置は予算枠の関係で調達が難しくなった。そこでFT-NIRについては、正反射方式にはなるが、学内の据え置き型FT-NIRで代用して研究を進めた。また、非金属異物試料については、外観ではどのような材料であるのかが分からないため、その種類を熱特性で同定するため、熱分析装置を導入した。この機器の導入および今年度の実験に用いた消耗品の合計額が、今年度の実施予定額よりも少なく済んだため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究では、角度可変での測定が必要になってくる。これは特殊な治具であり、特注品となる。また、分析試薬等の購入も次年度は増えることが見込まれている。 このため、次年度使用額については、当初の予定にはなかった特殊治具の購入、および分析試薬等の購入に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)