2016 Fiscal Year Research-status Report
アディポカインによる家禽の下垂体機能制御に関する研究
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16K07983
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
大久保 武 茨城大学, 農学部, 教授 (70233070)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レプチン / ニワトリ / 下垂体 |
Outline of Annual Research Achievements |
飢餓や飽食など栄養状態の変化は、動物の成長や生殖機能に影響を及ぼすが、その影響は視床下部―下垂体系に作用するホルモン等による支配を受けている。家禽の中でも、ニワトリは用途に応じた改良の結果、肉用鶏と卵用鶏の間にはエネルギー要求量のみならず、摂食に対する内分泌支配など種々の生理学的差異が認められている。そこで本研究では、摂食応答に係るホルモンの1つであるレプチンの下垂体ホルモン産生に及ぼす影響を器官培養および初代培養により検討した。その結果、下垂体ホルモン遺伝子に対するレプチンの効果は様々であり。レプチン処理による影響を受けない遺伝子、増加する遺伝子、減少する遺伝子が認められた。またこれらのレプチンにより反応性は、肉用鶏と卵用鶏で異なる可能性をあわせて確認した。さらに、低濃度のレプチン処理ではmRNA発現が増加するものの、高濃度ではその効果が消失する遺伝子が認められたが、高濃度のレプチン処理では、レプチン情報伝達を抑制する分子であるSOCS3の発現量が増加していることから、ネガティブフィードバックによる反応性の低下であると考えられた。さらに、下垂体ではレプチンmRNAが発現していることも確認した。これらの結果より、下垂体はレプチンの標的器官であり、下垂体ホルモン遺伝子の発現を視床下部を介さずに、下垂体で発現するレプチンによって制御されている可能性を見出した。また、レプチンと下垂体ホルモンの相互作用を明らかにする目的で、レプチン受容体と成長ホルモン受容体またはプロラクチン受容体の共発現細胞株の樹立を行い、STAT分子の活性化を指標としたスクリーニングにより、レプチンとプロラクチンまたは成長ホルモンに応答する細胞株を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下垂体ホルモンの遺伝子発現に対する効果については、下垂体培養系を用いて検討を行い、各種ホルモン遺伝子の発現に対するレプチンの効果について、肉用鶏と卵用鶏の系統差も含めて明らかにすることができた。また、レプチンと下垂体ホルモンによるJAK-STAT系情報伝達の協調的制御の解析に用いる細胞株については、初年度に樹立を完了し、翌年度以降の実験に利用できる状況が整えられた。その一方で、初代下垂体培養法の確立のための条件検討に時間を要した結果、当初予定していた視床下部ホルモンのmRNA発現に対するレプチンの影響については、採材までにとどまり、遺伝子発現の解析を完了することはできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に計画していた視床下部ホルモンのmRNA発現に対するレプチンの影響の解析を完了し、下垂体ホルモン発現に対するレプチンの効果について、視床下部を介した間接制御と、下垂体細胞への直接制御について明らかにする。その上で、レプチンにより直接遺伝子発現が制御されている可能性がある遺伝子について、その転写制御領域の解析を進め、レプチン応答領域の同定および転写制御領域の遺伝子多型のスクリーニングを実施する。また、レプチンと下垂体ホルモンの相互作用に関する研究に着手し、初代ニワトリ繊維芽細胞及びニワトリ肝ガン細胞を用いて、脂質代謝遺伝子等、レプチンと下垂体ホルモンによって協調的に発現が制御される可能性がある遺伝子群についてリアルタイムPCRにより調査する。
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Causes of Carryover |
初代培養系の確立に時間を要したため、当初予定していた視床下部ホルモンのmRNA発現に対するレプチンの影響の解析については、試料の採取までにとどまり、遺伝子発現の解析を完了することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
視床下部ホルモンのmRNA発現の解析を実施するための物品費として利用し、29年度の早期に研究を完了する。その上で、得られた結果に基づき、29年度計画に沿ってレプチン依存的に発現が制御されている遺伝子の転写制御とともに、レプチンと下垂体ホルモンの相互作用について遺伝子発現解析を中心に研究を実施する。
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Research Products
(4 results)