2017 Fiscal Year Research-status Report
アディポカインによる家禽の下垂体機能制御に関する研究
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16K07983
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
大久保 武 茨城大学, 農学部, 教授 (70233070)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レプチン / 下垂体 / 卵巣 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの培養下垂体を用いた実験によりレプチンが下垂体ホルモン遺伝子の発現を変化させることを認めていることから、ニワトリヒナを用いて、レプチンは視床下部及び下垂体ホルモンの発現に及ぼす影響について解析した。特に本年度は幼若期の性腺機能の発達にレプチンが及ぼす影響を解析する目的で、卵巣の機能分化が生じる7日齢と28日齢のヒナを用いて、視床下部ではGnRH、GnIHおよびレプチン受容体(LEPR)、下垂体ではLHβとFSHβのmRNA発現を検討した。その結果、視床下部のLEPR mRNA発現は、7日齢、28日齢ともにレプチン投与により有意な変化を示さなかったが、28日齢ではレプチンの用量依存的にその発現が増加する傾向が認められた。視床下部のGnRHとGnIH のmRNAの発現は日齢により異なる変化を示し、下垂体のLH βとFSHβのmRNA発現も、時期特異的なレプチンに対する応答を認めた。一方、7日齢と28日齢の卵巣のおけるLEPR mRNA発現はレプチン投与でそれぞれ増加および低下した。また卵巣のFSH受容体およびCyp19A1の発現は、7日齢ではレプチン投与で増加したが、28日齢では変化せず、レプチンへの応答性は日齢で異なっていた。以上より、レプチンは視床下部-下垂体-性腺軸に作用し、幼若期の卵巣機能の発達に影響を及ぼす可能性が示された。さらにレプチンが7日齢の卵巣のCyp19A1 mRNA発現を上昇させたことから、レプチンによるCyp19A1遺伝子の転写制御を明らかにするため、昨年度までに樹立した細胞株を用いてレプチンによるCyp19A1プロモーターの活性化をルシフェラーゼアッセイで解析した。しかしながら、今回の条件ではレプチンによるCyp19A1プロモーターの活性化は確認されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養系の研究から個体を用いた研究へと展開し、レプチンが視床下部-下垂体系に作用することを改めて確認できた。特に本年度は、卵用鶏の産卵機能との関係に着目し、視床下部及び下垂体の遺伝子に加え、卵巣の機能発達に関与する遺伝子群についてもあわせて解析し、レプチンが下垂体を介して幼若期のニワトリ卵巣機能の発達に影響を及ぼす可能性を見出した。その上で、レプチンが、エストロゲン合成酵素であるCyp19A1の転写に対するレプチンの効果を樹立した細胞株を用いて検討したが、特異的な影響は認められず、その変化がレプチンの卵巣への直接作用ではなく、中枢を介した作用である可能性が示唆された。しかしながら、レプチンに対する視床下部及び下垂体の遺伝子の応答性が時期により異なることから、レプチンに特異的応答する遺伝子のスクリーニングが課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
レプチン応答性遺伝子の同定と転写制御についてより詳細に解析を進める必要があり、視床下部‐下垂体‐性腺軸の制御に関与する遺伝子群を含めより広範な遺伝子の発現を調査することで、レプチンによる下垂体機能制御と家禽生産との関連について検討を進める。また肉用鶏と卵用鶏との間でレプチン依存的な遺伝子発現に差が認められるかについても、実験を継続し、遺伝的な改良の方向性とレプチンとの関連について検討を加える。また引き続き、すでに取得した各種受容体発現細胞を用いて、レプチン応答遺伝子に制御に対する下垂体ホルモンの関与、あるいは下垂体ホルモン応答性遺伝子の転写に対するレプチンの作用を検討し、レプチンと下垂体ホルモンの相互作用についてその標的遺伝子と転写制御について明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成29年度中に掲載決定していた論文の出版が平成30年度になったため、論文掲載料として計上していた費用の支出ができなかったが、論文が出版されたので直ちに使用する。予定していた研究は概ね順調に進められたが、レプチン応答性遺伝子の転写解析結果に差が見出されなかったため十分な解析ができなかった。そのため必要としていた培養用血清や培養器具などの物品ための経費を繰り越すこととなった。29年度の結果に基づき新たなレプチン応答遺伝子について解析する準備を進めており、これらについては、30年度の研究計画とあわせてレプチンと下垂体ホルモンの相互作用の解析として培養系を中心に研究を実施する。また、前年度まで実施してきた動物実験についても継続してデータを収集する必要性が生じたため、これらについても30年度内に実験が終了するよう計画し適切に実施する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] AMP-activated protein kinase mediates the effect of leptin on avian autophagy in a tissue-specific manner2018
Author(s)
Piekarski A, Nagarajan G, Ishola P, Flees J, Greene E, Kuenzel W, Ohkubo T, Helena Maier H, Bottje W, Cline M, Dridi S
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Journal Title
Frontiers in Physiology
Volume: 印刷中
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access