2017 Fiscal Year Research-status Report
新世界ウズラおよび旧世界ウズラの系統造成と利用開発
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16K07986
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小野 珠乙 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (10177264)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コリンウズラ / ニホンウズラ / 遺伝資源 / 胚培養 / 実験動物化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ニホンウズラの特異的系統を成体維持している研究機関が激減している。鳥インフルエンザが流行すると産業用のニホンウズラ(Coturnix japonica)の流通・研究利用も困難となる。一方,キジ目ナンベイウズラ科のコリンウズラ(Colinus virginianus)は米国において狩猟および肉利用のため数系統保有されているが実験動物としては確立されているとは言い難い。経済協力開発機構(OECD)は鳥類を指標にした生態系への影響に関するテストガイドラインの試験法として複数の種の使用を規定しており,ニホンウズラとともにコリンウズラの使用が推奨されている。本研究課題の目的は新旧両世界のウズラ類,特に新規系統造成中の白色系コリンウズラおよび食肉用に育種された大型系ニホンウズラ(ジャンボウズラ)を広くライフサイエンスのための実験動物はもとより,発生工学研究用の実験動物として開発・確立することである。さらには鳥類感染症等の発生による遺伝資源の完全崩壊を回避できる体制を構築することが重要である。平成29年度は特に新世界ウズラであるコリンウズラの白色羽装ミュータントのクローズドコロニーの系統造成を強化して飼育数を増加させ,広く研究者が使用できるようにした。また,国際,国内および学内共同研究を推進した。鳥類のPGCsは絶滅危惧種や貴重種の保全,形質転換動物の作成などに用いられる。始原生殖細胞特異的免疫システムを用いなくても始原生殖細胞と赤血球などの体細胞との細胞サイズの差を利用して,ニワトリ,ニホンウズラ,カモ,アヒルの始原生殖細胞と体細胞(赤血球)を8ミクロンの膜を通過させることにより簡便に分離する方法を開発した。この方法はコリンウズラをはじめ多種の鳥類に適用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常サイズのニホンウズラと同一種であるが食肉用に育種された通常より体が大きく成長するジャンボウズラは系統造成が順調に進み,広島大学と名古屋大学に提供することができた。この系統(JFN系統)は羽装を優性形質のフォーン(淡黄褐色)で固定した。骨格筋芽細胞の増殖・分化能は肉用ニワトリの方が卵用ニワトリより活発に増殖することと,遺伝子発現プロファイルも異なること,およびマウスとニワトリの骨格筋芽細胞は自発的に融合することを明らかにした。ニホンウズラの肉用系と卵用系の育種改良による体重および成長の差はニワトリに比べると小さいのが現状であるが,両サイズのニホンウズラの間でも観察できる現象であると示唆される。ニホンウズラにおいて前卵の放卵後2時間以内に排卵された次卵(未受精卵)を卵管膨大部から取り出し,紫外線照射後に鳥類卵賦活活性因子(ホスホリパーゼCゼータ,アコニット酸ヒドラターゼ,クエン酸合成酵素)のcRNAと胚盤葉細胞核を投与し,サイトカラシンB処理をすると胚盤葉ステージまで到達することが観察された。受精直後のニホンウズラ卵を卵管から回収し、mRNAの合成阻害剤であるα-アマニチンを添加した培地中で24時間の卵培養を行ったところ胚発生はステージVで停止したことからウズラ初期胚における胚自身のゲノム活性化のタイミングはステージV頃であることが示唆された。 コリンウズラはニワトリの膵臓と構造・機能的に類似性が高く,膵臓ランゲルハンス島内にグルカゴン様ペプチド-1特異的受容体免疫陽性細胞が観察され,ソマトスタチンにも陽性であった。系統的にも離れているニワトリ,ダチョウとも比較することにより鳥類における普遍性を示すことができた。 以上の結果からおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでと同様の手法により,ニホンウズラとコリンウズラの比較研究を継続しながら,コリンウズラの実験動物化を目指す。ニホンウズラ,コリンウズラ,ニワトリで顕微授精による受精卵の発生がより効率的に進み,確実に孵化例が得られるようにする。そのためには鳥類の顕微授精には不可欠と考えられるホスホリパーゼCゼータ,アコニット酸ヒドラターゼ,クエン酸合成酵素の顕微授精時の適正量の探索を続ける。 白色系コリンウズラ(rW系統)の雌雄は生殖器,羽装,などの外部形態からは識別できないので性判別はPCRで実施しているが,性別は瞬時に判別できるようにしたい。詳細な形態観察により簡便な外部形態の違いによる雌雄識別法を開発する。コリンウズラそのものの生物学的特性も明らかでない点が多いので,引き続き,比較生物学の立場から研究を継続する。 ニホンウズラあるいはコリンウズラのドナー由来生殖細胞からの個体復元を目指す。ニホンウズラと コリンウズラにおいてそれぞれの種内で系統が識別できるPCRプライマーを探索し,それによりドナーとレシピエントもゲノム識別ができるようにする。それぞれのクローズドコロニーにおいて,識別できるDNAマーカーを選定し,それを指標にして遺伝的背景をそろえるようにする。生殖細胞キメラ候補のオスを選出して,生殖細胞キメラ候補及びドナー種のメスと検定交配をする。レシピエント本来の生殖細胞除去によりドナー配偶子の寄与率の向上が期待され,キメラ候補メスとの交配により直接個体復元が可能となる。このレシピエント本来の始原生殖細胞を除去する方法の効率化をはかる。レシピエント胚の始原生殖細胞を減少させる方法として,ブスルファン投与と軟X線 照射の最適の条件を決定する。研究成果は高い評価のある学術雑誌に投稿する。
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Research Products
(20 results)
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[Journal Article] The dynamic development of germ cells during chicken embryogenesis2018
Author(s)
Yang, S. Y., Lee, H. J., Lee, H. C., Hwang, Y. S., Park, Y. H., Ono, T. and Han, J.Y.
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Journal Title
Poultry Science
Volume: 97
Pages: 650-657
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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