2017 Fiscal Year Research-status Report
交尾排卵動物スンクスを用いた排卵制御神経メカニズムの解明
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16K07987
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
井上 直子 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90377789)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プリン受容体 / ATP / 排卵 / 黄体形成ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、哺乳類において排卵中枢であると考えられている視索前野/前腹側室周囲核キスペプチンニューロンへ入力する神経機構を同定することによりキスペプチンニューロンを活性化し排卵を誘起するメカニズムを明らかにすることを目的としている。 本年度は、昨年に引き続き、実験に使用できる十分な個体数が確保できるラットを用い、視索前野/前腹側室周囲核キスペプチンニューロンを上位から制御するシグナルとしてATP/P2X2受容体シグナルに着目し研究を進めた。 Wistar-Imamichi系統雌ラットに卵巣除去を施し、LHの大量放出(LHサージ)を誘起できる程度の高濃度エストロジェンを1週間処置し、OVX+highE2モデルを作製した。OVX+highE2ラットの前腹側室周囲核近傍に、プリン受容体拮抗薬を投与したところ、夕刻にみられるはずの内因性LHサージが完全に抑制された。また、OVX+highE2ラット脳内におけるP2X2受容体の局在を免疫組織化学により検討したところ、前腹側室周囲核キスペプチンニューロンの細胞体において、P2X2受容体の局在がみとめられた。これらの結果より、ATPが前腹側室周囲核キスペプチンニューロンに発現するP2X2受容体に直接作用してキスペプチン分泌を促し、ひいてはGnRH/LH分泌を促進し、排卵が誘起される可能性が示唆された。 現在、交尾排卵動物のスンクスを用い、視索前野キスペプチンニューロンにおけるP2X2受容体発現の検討を実施しており、交尾排卵におけるATP/P2X2受容体シグナルの役割の解明をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、プリン受容体拮抗薬のラット前腹側室周囲核近傍への脳内投与により、内因性のLHサージが完全に抑制できたこと、またラット前腹側室周囲核キスペプチンニューロンにおいてP2X2受容体が発現していることを組織学的に明らかにすることができ、ATPが排卵中枢である前腹側室周囲核キスペプチンニューロンのP2X2受容体に直接作用し、キスペプチン分泌を制御している可能性を見いだすことができた。また、スンクスの自家繁殖状況の改善に取り組み、現在実験に使用できるスンクスが徐々に得られてきている。これらの個体を用い、スンクス脳における組織学的解析を実施している最中であり、交尾排卵動物においてもATP/P2X2受容体シグナルが視索前野キスペプチンニューロンを制御するシグナルとして機能しているかどうか検討をすすめており、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、他の機関から雌雄6頭の繁殖用スンクス個体の供与が決定している。当施設におけるスンクスの自家繁殖状況のさらなる改善に取り組み、スンクスとラットの両方を用い、ほ乳類の排卵におけるATP/P2X2受容体シグナルの役割を明らかにしてく予定である。具体的には、スンクスおよびラット視索前野/前腹側室周囲核キスペプチンニューロン近傍においてATPを放出する 細胞を同定するため、神経内分泌細胞において、ATPの小胞内蓄積や放出に関与することが示されている小胞型ヌクレオチドトランスポーターに着目し、スンクスおよびラット視索前野/前腹側室周囲核キスペプチンニューロン近傍における小胞型ヌクレオチドトランスポーター発現細胞の局在や神経投射を組織学的に明らかにする予定である。
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Research Products
(5 results)