2017 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリアからのアプローチでわかる、母体の老化が卵子に記憶されるメカニズム
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16K07996
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
岩田 尚孝 東京農業大学, 農学部, 教授 (50385499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 卵子 / 加齢 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度次世代シーケンサーを用いて見つけたミトコンドリアの変異箇所および正常箇所に対して作製したプライマーを用いて卵子と顆粒層細胞のミトコンドリア数をリアルタイムPCRを用いて比較した。また人工的に作成したテロメア配列を用いてテロメア長の絶対定量を行った。 卵子も顆粒層細胞も同様にミトコンドリア数やテロメア長が加齢に伴い減ることを明らかにできた。さらに卵子で確認できた変異個所と正常個所のミトコンドリア数の差異は顆粒層細胞では大きな差が観察されず、ミトコンドリアの変異が蓄積する度合いは卵子において高いと推測された。 この差が表れる原因を明らかにするため、ミトコンドリア障害を卵子に与えたところ、加齢個体に由来する卵子では、回復が悪く発育能力の低下が著しく、ミトコンドリアの新規合成の減少が見とめられた。そしてこれが障害後の卵子のSIRT1の活性化が若齢個体に比べて低調であるためであることを明らかにした。 さらに、若齢と加齢個体由来の卵子顆粒層細胞複合体間で顆粒層細胞の交換実験を行ったところ、加齢個体の顆粒層細胞に包まれた若齢個体由来卵子ではミトコンドリア数が若齢個体由来の顆粒層細胞に包まれた場合に比べ減少することを見出した。これは周囲の細胞が卵子のミトコンドリア数に影響している可能性を示す知見であると考えている。 またチップセックを行い加齢で低アセチル化になるヒストンの対象遺伝子候補を見つけることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究当初の計画どおり加齢個体のミトコンドリア修復機能の低下の原因の一端を明らかにし、さらに細胞と卵子間のミトコンドリアゲノムの変異の相同性を比較することが出来た。これらの成果は2本の論文として掲載できた。また計画通り月齢によって異なるアセチル化状態にあるヒストンに関連する遺伝子の候補を見つけることが出来た。さらに脂質がミトコンドリアタンパクを高アセチル化する事象を見つけこれがAMPKの活性低下を引き起こす原因であることを明らかにでき、これを1本の論文にすることができた。これは環境がミトコンドリアに記憶される一端に関連した事象であり予定を上回る成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおりチップセックで見つけた遺伝子の発現を比較する。また加齢卵子の救済方法の一つとして計画していた細胞の交換が良好な成果を挙げたことから加齢個体由来の卵子に対して若齢個体の細胞の追加が有効かを明らかにする。ミトコンドリアのゲノムの変異についてはミトコンドリアの品質管理機構の活性化によりこれを軽減することが可能かについて検討を行う。
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