2017 Fiscal Year Research-status Report
ウシ精子の体外受精胚発生率および受胎性に係るDNAメチル化状態の解明
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16K07999
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
武田 久美子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門家畜育種繁殖研究領域, 上級研究員 (60414695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 栄治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門家畜育種繁殖研究領域, ユニット長 (00186727)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ウシ / 精子 / メチル化 / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、人工授精後の受胎率の異なる凍結精液サンプル4検体を追加し、ヒト高密度メチル化解析用チップ(EPIC,イルミナ社)により、網羅的なメチル化状態について人工授精後の受胎率との関連性の検証を進めること、メチル化差異の簡易検出のためCombined Bisulfate Restriction Analysis (COBRA)法で検出できる系を確立し、より多数の検体のスクリーニングを行うことを目的とした。 まず、人工授精後の受胎率の判明している9頭の雄牛(高受胎、55%以上、3頭;低受胎、40%未満、6頭)の凍結精液由来DNAについてEPICによる網羅的メチル化データを得、グループ間で比較解析を行った。検討の結果、T検定により高低群間に有意差のあったCpG部位は646箇所あり、相関解析により有意な相関のあったCpG部位は834箇所あった。これらのうち、高低群のメチル化度に0.2以上差のあるCpG部位は234箇所であった。次に、メチル化差異が検出されたCpG部位を含む領域に対するBLAST検索によりウシのDNA配列を特定し、ターゲット部位に制限酵素にて判別可能なものを検索した。その結果、4箇所でCOBRA法によるメチル化差異の検出が可能であり、そのうち2箇所についてマイクロアレイの結果と同様に高受胎および低受胎間でのメチル化度の差が検証できた。2箇所のCpG部位をターゲットとしたCOBRA法を用いて、受胎率の判明している黒毛和種雄牛由来凍結精液25頭分(n=41)のメチル化度の違いについて評価を試みた。その結果、受胎率が40%未満と50%以上のグループ間でメチル化度の平均値に有意差が見られ(P<0.05)、さらに受胎率との関連性が示された(P<0.01)。また、COBRA法を用いることにより1個1個の受精卵についてもターゲット領域のメチル化度の評価が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工授精後の受胎率の判明した凍結精液サンプルを用いて、網羅的メチル化情報の蓄積を行うことができた。また、受胎率の高いグループと低いグループ間での比較を行うことができ、この時点でのメチル化度の違いを検出することができた。さらに、この情報をもとに、実際ウシゲノムでのメチル化度の違いに反映しているかどうかの検証をCOBRA法によって行うことができ、多検体のスクリーニングや受精卵評価についても行うことができた。 改良型ヒト高密度メチル化解析用チップ(Infinium MethylationEPIC BeadChip,イルミナ社)での分析は、本来ウシではなくヒトのゲノムを対象とした解析であり、ウシゲノムでの解析については結果の保証がされていない。今回1検体解析不能となるサンプルがあったが、2回目の解析依頼では解析が可能であった。この結果を含め、検体数を増やした精度の高い比較解析を次年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度蓄積した結果をもとに、網羅的なメチル化状態について地域性の相違も含めた検証を行っていく。また、評価指標となりうるメチル化可変部位を更に蓄積するために、人工授精後の受胎率および体外受精胚発生率に関連したメチル化差異の検索、配列の特定およびCOBRA法による検出系の確立、また、これらの差異が体外受精胚へどのように影響するかの調査を継続して行う。
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Causes of Carryover |
(理由)解析した4検体のうち1検体が解析不能となり、再度の分析依頼を優先したことにより、雇用予定としていた実験補助員の日数を減じたため、結果的に残額が生じた。 (使用計画)昨年度の結果をふまえ、改良型メチル化チップの分析を必要数行う。また、必要に応じて実験補助員の雇用を行う予定である。
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