2016 Fiscal Year Research-status Report
ウシにおける植生識別能力の解明ならびに植生識別能力に配慮した草地の創出と評価
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16K08008
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
平田 昌彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (20156673)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウシ / 植生識別能力 / 視覚 / 嗅覚 / 触覚 / 味覚 / 体系的評価 / 草地設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の第1の目的である「ウシの植生識別能力の体系的把握と理解」のために2つの実験を実施した。 【1】視覚による植生識別に焦点を当て,ウシが緑草と枯死草という対照的な草を識別できるか,また,どの程度の距離から識別できるかについて検討を試みた。野外に試験区を設置し,現実の植生選択の状況に近づけつつ,嗅覚を利用した識別ができないような工夫を施した。実験を進めるうちに,偏側性,自発的交代,stay/shift戦略,枯死草に対する調査などの行動の関与のため,植生識別能力の評価が当初の予想よりも複雑かつ困難であることが明らかとなった。このため,最終的には,ウシが少なくとも1 mの距離から視覚によって緑草と枯死草を識別できることが示唆されたものの,識別距離の限界は評価できなかった。今後は,以上の行動特性を考慮した実験計画とデータ処理が必要であることが示された。 【2】選択対象となる植生そのものに触れたり,植生を食べたりできるほどの近距離における植生識別に焦点を当て,コントラストの程度が異なる2組の植生(明瞭な対照:緑草と枯死草,より不明瞭な対照:2種類のイネ科草)を用いて,植生識別に対する視覚,嗅覚,触覚,味覚の寄与について評価した。偏側性,自発的交代,stay/shift戦略のいずれの行動特性にも適合しない個体を抽出し,解析した結果,ウシは,明瞭な対照の識別においては,視覚に大きく依存し,視覚が使えない時には,鼻口の触覚に大きく依存することが明らかになった。また,明瞭でない対照の識別においては,視覚以外の3つの感覚に同程度に依存することが示唆された。嗅覚の寄与は対照の明瞭度に依存しないと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した【平成28年度】の計画にほぼ沿って研究を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
【平成29年度】 平成28年度に引き続き,ウシの植生識別能力に関する実験を継続し,データを蓄積する。特に,視覚と嗅覚による植生識別能力に重点を置く。平成28年度と29年度のデータを合わせて解析し,ウシにおける植生識別能力について,その特徴,各感覚の寄与程度ならびに限界などの点から明らかにする。 【平成30年度】 さらにデータを集積し,前年までのデータとまとめて解析することにより,ウシにおける植生識別能力について,その特徴,各感覚の寄与程度ならびに限界などの点から明らかにする。ここまでの段階で得られた情報をもとに,ウシの植生識別能力に配慮した草地(例えば,採食したい植物種・部位が見つけ易い草地)の設計・創出を開始する。 【平成31年度】 設計・創出した草地に牛群を放牧し,草地の利用について,動物側と草地側の双方から測定する。これらのデータを解析することにより,草地の性能について評価・検証するとともに,ウシの植生識別能力の観点に立った草地のあり方について考察する。また,4年間の結果を総合して,“ウシにおける植生識別能力”ならびに“植生識別能力に配慮した草地のあり方”について取りまとめる。
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