2017 Fiscal Year Research-status Report
てんかん家系犬のてんかん発生機序および梨状葉の発作焦点に関する分子病理学的研究
Project/Area Number |
16K08020
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
森田 剛仁 鳥取大学, 農学部, 教授 (70273901)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | てんかん |
Outline of Annual Research Achievements |
梨状葉皮質は、ヒトのてんかん患者において新たな発作焦点として近年注目されている領域であるが、その発作焦点の形成機序について詳細は不明である。今回、リチウム・ピロカルピン投与による側頭葉てんかんモデルラットを用いて、発作後の梨状葉皮質に生じる形態学的変化について経時的に検討した。その結果、発作誘発後から150日後まで断続的に発作を示した。発作誘発後の1日から14日後に梨状葉皮質において、神経細胞壊死(原因不明)、Iba-1陽性ミクログリアの増数およびアストロサイトの増数が認められた。14日後には梨状葉皮質においてGFAP陽性アストロサイトの増数と共に多数のDCX陽性細胞が認められた。30日および60日後にはDCX陽性細胞は認められず、NeuN陽性の成熟神経細胞が散見された。150日後では、数層にわたりNeuN陽性の新生神経細胞の集塊が観察され、同部位にPSD-95の陽性像およびSyptの強陽性像が認められた。以上の結果より、①梨状葉において発作誘発後1日目より組織傷害が生じ、14日目より主に組織修復および神経新生が生じること、②アストロサイトの著明な増生を伴いDCX陽性未熟神経細胞が増生する可能性があること、③発作後150日後に瘢痕組織周囲にPSD-95陽性細胞(グルタミン酸作動性神経細胞)が出現し、新たな発作焦点となる可能性が示唆された。今後は何故、梨状葉皮質に神経細胞壊死が生じるのか、さらにどのようにPSD-95陽性細胞が生み出されるか、その機序について詳細に検討する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リチウム・ピロカルピン投与による側頭葉てんかんモデルラットの作製が順調に実施され、以下の3点の結果、すなわち、①梨状葉において発作誘発後1日目より組織傷害が生じ、14日目より主に組織修復および神経新生が生じること、②アストロサイトの著明な増生を伴いDCX陽性未熟神経細胞が増生する可能性があること、③発作後150日後に瘢痕組織周囲にPSD-95陽性細胞(グルタミン酸作動性神経細胞)が出現する、などの発作焦点の形成機序に関わる重要な結果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた結果、すなわち①梨状葉において発作誘発後1日目より組織傷害が生じ、14日目より主に組織修復および神経新生が生じること、②アストロサイトの著明な増生を伴いDCX陽性未熟神経細胞が増生する可能性があること、③発作後150日後に瘢痕組織周囲にPSD-95陽性細胞(グルタミン酸作動性神経細胞)が出現し、新たな発作焦点となる可能性が示唆された。これらの点について、さらに症例を重ねる必要がある。また、梨状葉皮質に神経細胞壊死が生じるメカニズム、PSD-95陽性細胞が出現するメカニズムについて分子生物学的手法を用いて詳細に検討する。
|
Causes of Carryover |
リチウム・ピロカルピン投与による側頭葉てんかんモデルラットの作製は順調に実施できたが、脳病変の発生機序に関する解析に関わる抗体の情報を十分に取得できず、本研究に必要な抗体を十分に入手できなかったのが原因である。従って、次年度は脳病変の発生機序に関する解析に関わる抗体の情報を十分に取得し、必要な抗体を入手する予定である。
|