2017 Fiscal Year Research-status Report
ノロウイルス感染症とネコの関係-公衆衛生学的見地から-
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16K08027
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高野 友美 北里大学, 獣医学部, 准教授 (20525018)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ノロウイルス / 感染性胃腸炎 / 動物モデル / ネコ |
Outline of Annual Research Achievements |
毎年、ノロウイルスによる感染性胃腸炎は年齢を問わず爆発的な流行が報告されている。現在、米国を中心に、ノロウイルスに対する予防薬および治療薬の開発研究が実施されているが、実用化するに至っていない。ヒトと接触する機会が多い犬や猫でも、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が確認されている。現在、イヌノロウイルス(遺伝子型GVI)がヒトへ感染する可能性については複数の報告例があるものの、ネコノロウイルスがヒトへ感染する可能性を示した報告は無い。この理由として、人への感染性が疑われる遺伝子型GVIノロウイルスが猫に存在しないことが挙げられる。このような状況の中、我々は野外猫から世界で初めて遺伝子型GVIノロウイルスの検出に成功した。本研究で我々はGVIネコノロウイルスがネコに対して病原性を有すること再確認するとともに、同一ウイルス株を再接種した実験において、同一株の再感染が生じることを明らかにした。また、ヒトノロウイルスの遺伝子群GIVと遺伝子学的に類似するGIVネコノロウイルスについてもネコに対する病原性が存在する可能性を確認した。さらに、ネコノロウイルスがヒトノロウイルスの検査系で検出されることから、ヒトノロウイルスとネコノロウイルスは遺伝子および構造が類似している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究において、ネコノロウイルスがヒトのノロウイルスの検査系で検出出来る可能性が示唆された。本検査系を使用してネコにおけるノロウイルスの感染状況を調査すれば、ネコノロウイルスとヒトノロウイルスの両方を検出することが可能である。平成30年度においてネコのノロウイルス感染状況を実施する予定であり、このままの状況であれば、当初の研究計画において目標とした疫学調査を研究実施期間で達成できる。また、ヒトノロウイルスとネコノロウイルスの中空粒子(VLP)も完成しており、ネコの細胞やヒトの細胞を用いた結合試験も実施可能な状態である。残念ながら、ネコノロウイルスの分離は未だ成功していないが、その代わり、ネコを用いたネコノロウイルスの感染実験を実施し、ノロウイルスの再感染に関する新たな知見を提供することが出来た。このような状況を踏まえると、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目標の一つであるネコのノロウイルスの感染状況について、ヒトおよびネコのノロウイルスの両方を検査可能な方法を見出しており、この方法を用いてネコのノロウイルスの感染状況を確認するとともに、公衆衛生上、ネコがノロウイルス感染症において重要な動物か否かを調査する。また、作製したノロウイルスVLPを用いてネコのノロウイルス抗体保有状況を調べるとともにネコおよびヒトの株化細胞への結合試験を行う。この際、可能であればノロウイルスの全ての遺伝子群(GI-GVI)のVLPで検討を行う(現在、GIIIとGV以外は作製済み)。ネコを用いたノロウイルス感染実験では、成ネコを使用して、ヒトの成人におけるノロウイルス感染症の動態を再現する。人において、成人におけるノロウイルス感染症はボランティアで再現可能であるが、ヒト成人はほとんどがすでにノロウイルスに感染しており、感染後の状況、特に免疫動態を解析することは困難である。今回、ネコノロウイルスに一度も感染していない成ネコを用いることで、成熟した宿主におけるノロウイルス感染免疫の動態を解析できることが期待される。
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