2016 Fiscal Year Research-status Report
尿サンプルによる“Liquid Staging”の確立
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16K08045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 貴之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40447363)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | BRAF / 移行上皮癌 / Liquid Staging / DigitalPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は構築したDigitalPCRによる尿中BRAF変異検出法を用いて平成28年度に①尿検体を用いた検出感度評価、②臨床検体を用いた検出感度評価、③組織におけるBRAF変異と病態の関連性に関して主に検討を行った。健常犬尿とBRAF変異陽性移行上皮癌症例の尿を階段希釈し、Direct sequencing法、制限酵素断片長多型法(RFLP)、real-time PCR法、DigitalPCR法の検出感度を比較したところ、それぞれ13.2, 0.52, 6.8, <0.14%まで検出可能であり、DigitalPCR法が最も高感度であることを明らかにした。また症例の尿検体を用いた検討では移行上皮癌症例17症例のうち11症例が陽性であり、尿中BRAF変異の検出に関しては感度・特異度ともに100%であった。さらに悪性腫瘍を検出するという点においては細胞診検査と同等の検出感度(約70%)であったが、細胞診検査と遺伝子検査が互いの欠点を補いあうような性質を持つため、互いを併用することで悪性腫瘍の検出感度は約92%となった。30症例の膀胱移行上皮癌症例の組織を用いた検討では、20症例がBRAF変異陽性であったが、変異の有無によって発生部位、臨床ステージ、生存期間等を含めた長期予後には違いを認めないことが明らかになった。申請者はまた本年度に膀胱炎症例、膀胱移行上皮癌症例(<T2)、膀胱移行上皮癌症例(>T3)の尿検体を用いてショットガン解析によるプロテオーム解析を実施した。その結果、それぞれのグループで特異的に増減しているタンパク質候補を複数同定した。次年度以降はこれらの候補分子の中から最も有望なものを選定し、基底膜タンパク検出法及びDigitalPCRによる変異検出法と組み合わせLiquid Stagingの実現に向けて解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では平成28年度に、(1)デジタルPCR法による BRAF 遺伝子変異の検出感度の評価(尿検体モデル)、(2)デジタル PCR 法による BRAF 遺伝子変異の検出感度の評価(保存臨床尿検体)、(3) 基底膜蛋白検出法による組織損傷評価と腫瘍浸潤や病態との関連性(保存臨床尿検体、3点を解決課題として挙げていた。(1)、(2)に関しては順調に進行し、国内学会での発表も行っている。(3)に関しては尿検体の蓄積も十分であり、また技術自体は確立されたものであるため実施の準備は十分に整っているが、Liquid Stagingをより精密なものにするために申請者らは新たにプロテオーム解析を実施して候補分子を増やすことを選択したため平成28年度での実施は見送っている。しかしながら、プロテオーム解析の期間中に平成29年度の計画であった組織検体の解析を前倒しで進めており、国際学会での発表を行うなど一定の結果をすでに得ている。そのため計画は予算内で順調に進行していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の結果からDigitalPCR法の正確性や有用性を確認するとともに、プロテオーム解析から新たなstagingの候補分子を得た。臨床尿検体・組織検体の収集も順調であるため実験の進行にも支障はないと考えられる。平成29年度の計画としては当初の計画に加えて、尿検体を用いた新たな候補分子のバリデーションを実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度はLiquid Stagingをより精密なものにするために、申請者らは新たにプロテオーム解析を実施して候補分子を増やすことを選択したことで、本来平成28年度中に実施する予定の基底膜蛋白検出法による組織損傷評価と腫瘍浸潤や病態との関連性の評価を次年度に実施することとなった。また平成29年度に実施予定の組織検体の解析を前倒しで進めているため計画全体としての進捗状況は遅滞ないものと考えるが、これらの実施時期の変更に伴い次年度使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に生じた次年度使用額については、基底膜蛋白検出法による組織損傷評価と腫瘍浸潤や病態との関連性の評価に充てる予定である。
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