2017 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of "Liquid Staging" using urine samples
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16K08045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 貴之 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40447363)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | BRAF / 移行上皮癌 / Liquid Staging / digitalPCR / イヌ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は昨年度からの継続として臨床検体におけるデジタルPCR法によるBRAF遺伝子変異の検出感度の評価、ならびに前年度より前倒しで進めているBRAF変異の有無と病態との関連性について検討を重ねた。昨年度ではBRAF遺伝子変異検査を実施した臨床例は17症例にとどまったが、本年度は膀胱内腫瘤/膀胱粘膜肥厚/前立腺腫大を認めBRAF変異検査を行った症例は94症例となった。そのうち病理組織診断にて移行上皮癌と確定診断がなされた70症例におけるBRAF遺伝子変異による診断の感度、特異度、正診率はそれぞれ83.3%、100%、87.1%となり、前年度における実績と比較し、感度と正診率において精度の向上が見られた。また尿サンプルから得られる主要な情報の一つである細胞診との組合せた場合の診断の有用性を検討したところ、両者の組合せにより感度、特異度、正診率は100%、92.3%、98.6%とBRAF遺伝子変異、細胞診それぞれ単独による精度に比べ飛躍的な向上がみられた。これはgenotypeを判定するBRAF遺伝子検査とphenotypeを評価する細胞診がそれぞれの長短所を補い合った結果と考えられた。また尿サンプル中に含まれるタンパクの解析については昨年度実施したショットガン解析を基にプロテオーム解析を進め、膀胱炎症例や<T2およびT3膀胱移行上皮癌症の間でHemoglobin subunit alphaおよびbeta、Heat shock protein Hsp70(HspA1A)、Receptor tyrosine-protein kinase erbB-2などが特異的に増減していることが明らかとなった。最終年度では基底膜タンパク検出法との組合せを進めLiquid Stagingを実現させていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では平成29年度に実験②デジタルPCR法によるBRAF遺伝子変異の検出感度の評価および実験③基底膜蛋白検出法による組織損傷評価と腫瘍浸潤や病態との関連性の継続と実験④BRAF変異の有無と病態との関連性の検討を計画していた。デジタルPCR法によるBRAF遺伝子変異の検出感度に関しては本年度継続することによりBRAF遺伝子変異単独の解析においても細胞診との組合せにおいても感度および正診率がさらに上昇し、BRAF遺伝子変異検出を軸としたLiquid Stagingの有用性がより示唆された。また、病態との関連についてもこれまでに明らかにしてきており、さらに症例を重ねることでBRAF遺伝子変異やLiquid Stagingと臨床病態や治療予後との関連についても有用な情報が提供できるものと考える。尿中タンパクの詳細な解析として導入したショットガン解析を用いたプロテオーム解析ではLiquid Stagingの実現に向け有力な候補について解析を進めており、そのため基底膜蛋白検出法による解析については最終年度に移行することとしたものの、全体としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
Liquid Stagingの実現に向けBRAF遺伝子変異に関する解析は順調に進んでおり、症例の蓄積や尿サンプル、組織サンプルの収集も順調である。病態との関連についても解析を進めており、細胞診や尿中タンパク解析と組み合わせことで、より精度の高く、病態や治療予後に関する情報を提供できるイヌ膀胱移行上皮癌のLiquid Stagingの確立を目指したい。
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Causes of Carryover |
(理由) BRAF遺伝子変異に関する研究は予定通り進めてきたが、尿中タンパク解析について本年度はショットガン解析より得られた特異的なタンパク変動に関する解析を進め、基底膜蛋白検出法による尿サンプル解析についてはプロテオーム解析により得られた情報を踏まえて行うことでより有用性の高い解析になると考え最終年度にまとめて行うこととした。そのため次年度使用額が生じたものである。 (使用計画) 平成29年度に生じた次年度使用額については、基底膜蛋白検出法による尿サンプルの解析およびBRAF遺伝子変異や病態等との関連の評価に充てる予定である。
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