2017 Fiscal Year Research-status Report
音響キャビテーション誘導による空間選択的抗癌剤取り込み技術の研究
Project/Area Number |
16K08046
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 一昭 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10421934)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 実 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50154323) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 超音波 / キャビテーション / 抗癌剤 / 取り込み |
Outline of Annual Research Achievements |
超音波照射により生体深部に位置する癌細胞に局所的に超音波エネルギーを集中させ,音響キャビテーションによる抗癌剤取り込み促進技術を開発することで空間選択的で低侵襲な小動物の固形癌治療を実現することを目指している。 その実現のため、まず平成28年度は平面型超音波による抗癌剤取り込みの原理検討のため、培養細胞を用いたin vitroの超音波照射系およびマウス皮下腫瘍への照射系の立ち上げからスタートした。共振周波数622kHzの平面型超音波トランスデューサにより、ヨウ素酸化反応を指標とした実験から、パルス長に依存したキャビテーション発生増加現象が認められ、特に1パルス長を3ミリ秒以上とすることで顕著なキャビテーション発生が認められた。また、大腸癌系マウス移植腫瘍であるColon26による背部皮下腫瘍実験系を作成し、副作用を検討しつつ超音波パルス照射による抗癌剤カルボプラチンの抗腫瘍効果促進効果の実験系を確立できた。平成29年度は、Colon26に引き続き、マウス腹水型腫瘍株Sarcome180およびラット乳腺腫瘍株MRMT1の実験系を確立し、水溶性抗癌剤で脂溶性に乏しい抗癌剤であるが固型癌への効果が期待できるカルボプラチンの効果を促進する超音波パルス条件を3系統の腫瘍で検討した。Sarcome180では総超音波照射時間や音響強度が同じでも1パルスあたりの連続照射時間であるパルス長を長くすると細胞障害性が有意に上昇することがわかった。またMRMT1では超音波と抗がん剤を併用した際に細胞増殖抑制率が上昇し、マウスの皮下腫瘍に対する治療実験では、33 mg, 100 mg/kgいずれの投与量においても超音波併用群の方が有意に腫瘍の成長が抑制されていることが分かり、パルス超音波照射により抗がん剤の腫瘍への取り込み促進が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度にInVitroの実験系およびマウスへの照射系を立ち上げ、ヨウ素酸化反応によりキャビテーション効率検討実験、およびマウス大腸癌系皮下腫瘍の作成によるInVivo治療実験のスタートができた。29年度は、腫瘍の種類と抗癌剤の種類を増やす部分において、培養細胞系ではマウスのSarcom180とラットのMRMT1の2系統を立ち上げ、パルス超音波による抗がん剤取り込み能の検討を進めることができたが、Salcoma180およびMRMT1を用いたマウス・ラット固型癌化に手間取っていて、固型癌の系統を増やすことが十分できていない。平成29年か平成30年にかけ、他にマウスおよびラット腫瘍株の入手を進め、また、犬腫瘍由来腫瘍株を入手し、免疫不全マウスへの皮下固型癌作成の検討を開始しているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況欄に記載したように、治療実験を行うマウスおよびラットの固型癌の作成が遅れているが、別系統の株を入手することを進める予定である。さらに、獣医療での重要な腫瘍疾患である乳腺腫瘍あるいは肥満細胞腫、前立腺癌細胞をへの効果を検討するために、実際の犬に自然発生したこれら腫瘍を入手し、それを3次元培養下で抗癌剤の犬腫瘍への取り込み促進効果を検討する予定である。並行して、3次元培養腫瘍株の免疫不全マウスへの移植を試み、固形癌作成が可能であれば、治療実験まで進めたい。そのため、平成30年度には腫瘍3次元培養に経験豊富な臼井達哉特任講師を分担研究者に入ってもらい共同で遂行する。抗癌剤の種類に関して水溶性のカルボプラチンから進めているが、その他の抗癌剤の評価を進め、あわせて、前述の犬腫瘍での評価では、腫瘍ごとに感受性の高いと思われる抗癌剤を優先して評価する方針である。
|
Causes of Carryover |
超音波照射系にかかる費用が見込みより少なかったためであり、次年度腫瘍系の増加およびマウス固形癌実験による費用で使う見込みである。
|