2016 Fiscal Year Research-status Report
犬猫の糸球体腎症におけるオーバーフィル理論の解明、バイオマーカーおよび治療法開発
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16K08056
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
矢吹 映 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (10315400)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糸球体腎症 / ネフローゼ症候群 / Underfil / Overfil |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、症例収集と病態解析を中心に研究を行なった。糸球体腎症が疑われて腎生検の適応となった症例は7症例(1例は死後剖検、犬6例、猫1例)と例年よりも多かった。全ての症例において、5種類の染色(ヘマトキシリン・エオシン(HE)、過沃素酸シッフ(PAS)、過沃素酸メセナミン銀(PAM)-HEおよびマッソン・トリクローム(MT)染色、コンゴ・レッド)による光学顕微鏡観察、新鮮凍結切片による蛍光抗体法(IgG, IgA, IgMおよびC3)、透過型電子顕微鏡観察を実施した。その結果、7症例中3症例が免疫複合体糸球体腎炎と診断された。1症例は急性尿細管間質障害、1症例は慢性尿細管間質傷害をともなう非免疫複合体糸球体腎炎、1症例は糸球体血栓症(Glomerular thrombosis)、1症例は分類不能の糸球体疾患と診断された。糸球体血栓症は犬ではほとんど報告がなく、さらに詳細な解析が必要であると考えられた。また、分類不能の糸球体疾患は、その電子顕微鏡所見がヒトのアルポート症候群に類似していた。犬ではアルポート症候群の報告はまれである。すでに報告されている犬の原因アレルについて解析を行なったが、異常アレルは検出されず、本症例についてもさらに詳細な解析が必要であると考えられた。これら7症例のうちネフローゼ症候群を起こしていたのは2症例であった。この2症例について、underfilとoverfilのいずれのメカニズムで腹水や皮下浮腫が発生しているのかを臨床病理学的に推察したところ、両症例ともunderfilが強く疑われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、免疫組織化学的解析まで実施する予定であったが、予想よりも多くの症例で腎生検が実施されたため、その病態解析に計画していた以上の時間を費やした。しかしながら、想定していたより多くのサンプル収集ができたため、研究計画全体としてはむしろプラスになったと考えている。計画している免疫組織化学的解析に用いる抗体の多くはすでに予備実験において検出法が確立されており、研究全体としては大きな遅れは生じていないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も継続的に症例の集積を行なう。そのために、持続性の蛋白尿など糸球体腎症が疑われる症例については積極的に腎生検による病態解析を行なう。さらに、集積した症例の腎臓組織を用いてENACやNaポンプの免疫組織化学的解析を行なう。それにより犬と猫の糸球体腎症のOverfilメカニズムの一端を明らかにしていく。また、Overfilの誘発メカニズムについて、NOS, RA系およびCOXの発現についても解析を行なう予定である。血中および尿中のバイオマーカーの探索は、収集したサンプルを冷凍保存しておき、症例の集積後に網羅的に解析する予定である。本年度に多くの症例が収集できたことにより、過去の症例と合わせると相当数のサンプルが蓄積されている。その臨床病理学的結果をレトロスペクティブに解析することも計画している。
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Causes of Carryover |
計画していた免疫組織化学的検索の一部で実施できなかったものがあり、それに使用予定であった試薬代および消耗品代が次年度使用額として残った次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施出来なかった免疫組織化学的解析は次年度に実施する計画であり、その解析で必要な試薬や消耗品を購入する。
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