2016 Fiscal Year Research-status Report
精巣・代謝ホルモンと精子結合蛋白質解析による和牛の精液不良の原因解明と改善法開発
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16K08058
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川手 憲俊 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (80221901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 俊夫 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00137241)
玉田 尋通 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (10155252)
坂瀬 充洋 兵庫県立農林水産技術総合センター, 北部農業技術センター, 上席・主任研究員 (70463396)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 黒毛和種牛 / 精液異常 / 血中ホルモン濃度 / 精巣ホルモン / 代謝ホルモン / 精漿 / 精子結合蛋白質BSP |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は黒毛和種牛の精液性状不良の原因を解明することを目的として、精液性状の正常例と異常例について、性成熟前から性成熟後までの精巣ホルモンおよび代謝ホルモンの血中動態を解析し、両群間で比較した。実験には黒毛和種雄ウシ(n=66)を用いた。それらの雄ウシは12ヵ月齢から週1~2回の頻度で精液を採取し、一般精液性状検査を行って、正常(N)、新鮮精液の異常(A)、および精液の凍結融解後の低受胎(L)に分類した。さらに新鮮精液異常は精子奇形のみ(M)および精子奇形と運動性低下の合併したもの(M+L)に分類した。それらの雄ウシは4ヵ月齢から24ヵ月齢まで毎月1回の頻度で血液採取を行った。精巣ホルモンのインスリン様ペプチド3(INSL3)、テストステロンおよびインヒビン、代謝ホルモンのインスリン様成長因子-I(IGF-I)の血漿濃度を酵素免疫測定法もしくは時間分解蛍光免疫測定法で測定した。 6~22ヵ月齢におけるM+L群の血漿INSL3濃度はN群に比べて低い値を示した(P<0.001)。血漿テストステロン濃度はN群、A群およびL群間で有意な差はみられなかった。8~13ヵ月、16ヵ月、19ヵ月および20ヵ月のA群の血漿インヒビン濃度はN群に比べて低く(P<0.05)、10~12ヵ月齢および16~21ヵ月齢のL群の同濃度はN群に比べて低い値を示した(P<0.05)。8ヵ月、9ヵ月、11ヵ月および15~21ヵ月齢のL群の血漿IGF-I濃度はN群に比較して低値を示した(P<0.05)。 以上の成績から、1)黒毛和種牛の血中INSL3濃度の減少は精子奇形と運動性低下の合併症の原因となりうること、2)血中インヒビン濃度の低下は新鮮精液異常と凍結融解後低受胎の一因となる可能性、また3)血中IGF-I濃度の低下は凍結融解後低受胎と関連する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画として当初予定していた雄ウシの精液採取と新鮮精液一般検査、凍結精液査作成と融解後の検査、および凍結精液の受胎性検査、月1回の血液採取とホルモン測定は概ね遂行することができた。測定した精巣ホルモンはINSL3、テストステロンおよびインヒビンを測定し、代謝ホルモンはIGF-Iを測定した。また、一部の雄ウシについてはGnRH類似体を投与して投与前後血液採取を行って、血漿精巣ホルモンとLH濃度も測定した。したがって、概ね順調に進展しているといえる。本年度に計画していたが、未実施の項目については次年度以降に可能であれば実施する(詳細は以下の今後の推進方策に記載した)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は黒毛和種牛の精液性状と精漿中精子結合蛋白質BSP濃度およびホルモン濃度との関連性解析を行う。性成熟に達した黒毛和種雄ウシから精液を採取し、その一部を遠心分離して、精漿を採取する。精液検査を行い、精液の正常または異常を判定する。BSP蛋白質のうちBSP-1およびBSP-3の測定法を確立するため、各々のBSPの合成ペプチドを抗原としてポリクローナル抗体(抗BSP-1および抗BSP-3ウサギIgG)を作成する。作成した抗体のBSP蛋白質への結合能や特異性をウェスタンブロット法で調べて、作成した抗体が測定に使用可能かどうかを確認する。次にBSP蛋白質のEIA法を確立する。BSP蛋白質のEIA用にビオチン標識したBSP(BSP-1およびBSP-3)を作成して、各々の抗体と組合せて、試薬と精漿サンプルの至適希釈倍率を検討して、EIAによる定量法の確立を検討する。精漿中の精巣ホルモンとしてINSL3、テストステロン、インヒビン、代謝ホルモンとしてIGF-Iとレプチン、さらにBSP蛋白質濃度を測定し、精液性状の正常群と異常群との比較を行う。 平成28年度に未実施の項目については以下のように対応する。エストラジオールとコルチゾールの測定法は本研究室で確立済みであるが、経費の不足から平成28年度に未測定であり、次年度以降に予算的に可能であれば測定する予定である。またレプチンについては測定系を確立している最中であり、確立できれば次年度以降に測定する。また雄ウシの体重および陰嚢周囲長は毎月1回の頻度で計測済みであるが、データの統計処理をいまだ行っておらず、これについては次年度に実施し、公表する予定である。
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[Journal Article] Effects of long-acting GnRH antagonist, degarelix acetate, on plasma insulin-like peptide 3, testosterone and luteinizing hormone concentrations, and scrotal circumference in male goats.2017
Author(s)
Hannan MA, Kawate N, Fukami Y, Weerakoon WW, Bullesbach EE, Inaba T, Tamada H.
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Journal Title
Theriogenology
Volume: 88
Pages: 228-235
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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