2016 Fiscal Year Research-status Report
加齢によって変化する2型免疫応答の機序解明と機能回復への挑戦
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16K08075
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
森本 素子 宮城大学, 食産業学部, 教授 (30250301)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 線虫 / NAD / 加齢 / サイトカイン / 2型免疫応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管内寄生虫であるHeligmosomoides polygyrus(Hp)やNippostrongylus brasiliensis (Nb)がマウスに感染するとT細胞はTh2細胞へと分化し、Interleukin(IL)-4やIL-13などの2型サイトカインの増大によって虫の排除が起こる。本年度の本研究では、Balb/cマウスを18か月齢まで飼育した後Hpを感染させ、感染8日後に小腸及び腸間膜リンパ節を採取してサイトカイン遺伝子の発現定量解析を行うと共に、リンパ球のフェノタイプをフローサイトメトリー法(FACS)を用いて解析した。また、C57BL/6Jマウスや、樹状細胞の成熟が阻害されるPIR-B KOマウスの老齢個体を用いて同様の実験を行った。本研究では、サイトカイン以外に、代謝や炎症応答をコントロールし個体の老化に関与する因子としてサーチュインにも注目している。そこで、加齢マウスより肝臓を採取し、サーチュインを活性化する上で必須の補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドNAD+について、HPLCを用いて測定を試みた。 以上の結果、加齢マウスでは2型サイトカインであるIL-4およびIL-13の発現は有意に低下し、小腸粘膜下に形成される虫のシスト様構造周辺に集積する非炎症性マクロファージの数も減少することが確認された。さらに、腸間膜リンパ節の細胞についてFACSで解析したところ、Balb/cマウスでは3か月齢マウスに比べ18か月齢マウスでCD4+/CD25+細胞の割合が増加し、それは感染後も変化しないこと、PIR-B KOマウスではその上昇がより顕著であることがわかった。NAD+の測定については個体差が大きく、さらに解析例数を増やす必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①老齢マウスのサイトカイン遺伝子の変化、T細胞フェノタイプの変化については予定通り解析を実施した。②個体の老化に関与するサーチュインは、NAD+依存的に活性化されるタンパクで、NAD+が濃度依存的にCD4+T細胞の分化を制御することが報告されている(Tullius SG, et al Nat Commun 2014)。サーチュインが2型免疫応答に関与することを調べたLegutkoらは、その機序に樹状細胞の関与があることを報告しているため、樹状細胞の成熟が阻害されるPIR-B KOマウスを解析対象に加えたところ、加齢マウスで亢進が見られるCD4+/CD25+細胞の割合が顕著に上昇していることが確認できた。③NAD+の測定については、個体差が大きく、さらに例数を増やして解析する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
例数を増やし、NAD+の測定をさらに進める。さらに、老齢マウスより採取した小腸を用い、Laser Capture Microdissection(LCM)法により上皮細胞および平滑筋細胞を分取し、IL-33、2型サイトカインレセプターおよびシグナル伝達分子であるSTAT6の遺伝子発現定量解析を行って加齢による変化の有無を調べるとともに、引き続きサーチュインや炎症因子の解析も継続していく。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り執行し、少額の残高については無理に執行せず、次年度の消耗品購入に充てることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度物品費に充てる予定。
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Research Products
(6 results)