2016 Fiscal Year Research-status Report
繁殖促進効果をもつ反芻動物のフェロモン作用機構の解明
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16K08081
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
若林 嘉浩 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門・家畜育種繁殖研究領域, 主任研究員 (00510695)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フェロモン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒツジやヤギなどの雄効果フェロモンは、雄から分泌されて雌の繁殖中枢を活性化させ、性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌促進を介して、最終的に卵巣活動を賦活化することが明らかとなっているが、この神経機構については不明な点が多い。そこで本研究では、このフェロモンの受容部位、情報伝達経路、繁殖中枢における作用の発現機構を明らかにすることを目的としている。 本研究では、まず、雄効果フェロモンの受容部位を特定するための実験を行った。哺乳類のフェロモンは、一般の匂い分子を受容する嗅上皮とは独立した、「鋤鼻器」と呼ばれる感覚器によって受容されると考えられている。そこでシバヤギの鋤鼻器を物理的に閉塞した状態で、雄効果フェロモン呈示を行った。繁殖中枢の神経活動をリアルタイムに記録解析する実験手法によって、フェロモンに対する反応性を評価した結果、鋤鼻閉塞状態においてもフェロモン効果が検出された。このことから、シバヤギにおいては、雄効果フェロモンは鋤鼻器以外の部位において受容されることが明らかとなった。次に、受容部位であると推察される嗅上皮について、形態学的研究を行った。その結果、ヤギの嗅上皮の構造はげっ歯類のものと類似しており、また匂い受容体の発現パターン等も類似していることが明らかとなった。一方、げっ歯類では主に鋤鼻器に発現している鋤鼻受容体が、ヤギでは嗅上皮に広く分布していることが明らかとなった。これらのことから、ヤギ雄効果フェロモンは、嗅上皮を介して受容されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画に沿って、シバヤギにおいて雄効果フェロモンの受容部位を特定するための研究を行い、鋤鼻器ではなく嗅上皮によってフェロモンが受容されていることを示す結果を得ることができた。また、嗅上皮におけるフェロモン受容機構を解明するために、その形態学的特徴について多くの知見を得ることが出来た。一方、当初の計画であった、フェロモン呈示後の嗅上皮あるいは副嗅球における神経活動マーカーである初期遺伝子(c-fosあるいはEgr-1)の発現解析については、計画よりも遅れている。しかしながら、この解析は次年度以降に継続して行う事で結果を得ることが出来るものと考えている。これらの理由から、研究は当初計画通りにおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず鋤鼻閉塞後にフェロモン呈示をした際に、神経活動が上昇する部位を特定する実験を継続して行う。更に、嗅上皮において広く発現がみられる鋤鼻受容体遺伝子について、その分布や、共役する細胞内シグナル伝達に関連する遺伝子との共存を解析することで、嗅上皮におけるフェロモン分子の受容機構に関与する細胞の特定とその受容機構の解明を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、雄効果フェロモン作用部位の検討のために充分なヤギ頭数を揃えられなかった。このため、当初計画していた免疫組織化学染色に使用する抗体やin situ hybridization用の試薬類の購入費が必要とならなかったため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、免疫組織化学染色およびin situ hybridization用の試薬を購入し、雄効果フェロモンの受容部位の同定研究を行う予定である。また、嗅球へのトレーサーの微量注入実験を行う為の器具、試薬類を購入する予定である。
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